コラム
「パーキンソン病になりやすい性格ってあるの?」「性格との関連性を教えてほしい」などと考えていませんか。注意するべき性格があれば、知っておきたいと考える方は多いでしょう。パーキンソン病と性格の関連性は一部の研究で指摘されています。ここでは、リスクが高いと考えられている性格を紹介するとともに気を付けたい生活習慣なども解説しています。自身の性格などが心配な方は参考にしてください。
目次
以下の4大症状を特徴とする進行性の神経難病です。
【症状】
詳しくは後述しますが、このほかにも非運動症状などが現れます。発症すると自然に治ることはありません。原因は、脳の黒質ドパミン神経が脱落することです。脱落の理由ははっきりとわかっていません。50歳以上に多い病気ですが、稀に40歳以下で発症する方もいます。40歳以下のパーキンソン病を若年性パーキンソン病といいます。
治療は薬物療法が主流です。具体的には、ドパミン前駆物質のL-ドパ、ドパミン受容体刺激薬のドパミンアゴニストのいずれかに他の薬剤を組み合わせることが一般的といえるでしょう。手術を行うことやリハビリテーションに取り組むこともあります。
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繰り返しになりますが、パーキンソン病の原因ははっきりとわかっていません。現在のところ、遺伝要因と環境要因が組み合わさって発症すると考えられています。遺伝要因は親から受け継いだ病気になりやすい体質、環境要因は人を取り囲み影響を与える要因といえるでしょう。以上を踏まえたうえで、パーキンソン病になりやすい性格を紹介します。
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鳥取大学医学部神経内科は「パーキンソン病の疫学」で病前の性格について調べています。同グループは、患者・対象研究で病前の性格が非社交性の方はパーキンソン病になりやすいことを確かめています。また、小川浩らが発表した「パーキンソン病の症例・対象研究-喫煙と性格」では、以下のように記載されています。
病院対照比較および住民対照比較のいずれの場合とも優位さを認めた性格項目からみたパーキンソン病女性患者の特徴的病前性格像は,「非社交的,消極的,内向的,無口,小心,相談的,口数多くない」である。
引用元:J-STAGE 心身医・1984年12月・第24巻 第6号「パーキンソン病の症例・対象研究-喫煙と性格」 小川浩 富永砧民 久保奈佳子 佐々木隆一郎 細田裕 青木國雄 植松稔
「パーキンソン病の疫学」は1990年代、「パーキンソン病の症例・対象研究-喫煙と性格」は1980年代に発表された資料です。最新の資料ではない点に気をつける必要があります。また、「パーキンソン病の疫学」で「病前性格が発症とどのような関連を有すかは、今後さらに検討を要す」と記載されている点にも注意しなければなりません。性格が発症にどの程度の影響を与えるかは、わかっていないといえるでしょう。
一般的に、感情の起伏が少ない性格もリスクが高いと考えられています。マイナスの感情の起伏だけでなくプラスの感情の起伏も少ないため、ドパミンの分泌が少なくなってしまうからです。ただし、感情の起伏が少ない性格が、どの程度、発症に関係しているかはわかっていません。このような意見がある程度に考えておくとよいでしょう。
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リスクを高める生活習慣も存在するといわれています。具体的には次の通りです。
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鳥取大学医学部神経内科は「パーキンソン病の疫学」で、運動量が少ないとパーキンソン病を発症しやすい傾向があることを認めています。理由は示されていませんが、運動をするとドパミンが分泌されるため(運動をしないとドパミンの分泌が少ない)と考えられています。
ストレスフルな生活もリスクを高める恐れがあります。過度なストレスがかかり続けると、神経細胞がダメージを受けてしまうからです。これにより発症のリスクが高まると考えられています。仕事が忙しすぎるなど、強いストレスを慢性的に感じている方は注意が必要かもしれません。
食生活の乱れもリスクを高める可能性が指摘されています。摂取する栄養に偏りが生じると、身体はもちろん脳にも悪影響が及ぶためです。規則正しい食生活を心がけることが大切といえるでしょう。具体的には、タンパク質・糖質(炭水化物)・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂ることが勧められます。
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慢性的な睡眠不足も発症リスクを高める可能性があります。寝不足が続くと、免疫機能が低下するとともに神経細胞もダメージを受ける恐れがあるからです。忙しい生活を送っている方は、時間を確保するため睡眠時間を削りがちです。さまざまな不調が生じやすくなるため注意が必要といえるでしょう。適切な睡眠時間は人により異なりますが、一般的には7時間程度と考えられています。
お酒の飲みすぎもリスクを高める生活習慣と考えられています。神経細胞にダメージを与えてしまう恐れがあるためです。適度な飲酒の目安も人により異なりますが、厚生労働省は1日平均純アルコールで約20g(通常のアルコール代謝能を有する日本人を対象)としています。この量をビールに換算すると500ml、清酒に換算すると1合です。
出典:厚生労働省「アルコール」
一般的に、以上の性格・生活習慣を有する人はパーキンソン病のリスクが高いと考えられています。発症するとどのような初期症状が現れるのでしょうか。ここからは、気を付けたい初期症状を解説します。
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4大症状の前に非運動症状が現れます。具体的には、起立性低血圧・便秘・嗅覚障害・頻尿・発汗・易疲労性などの症状が現れやすいといえるでしょう。つまり、手が震えるなどの症状の前に、便がでにくい、臭いがわかりにくい、疲れやすいなどの症状が現れるのです。ただし、パーキンソン病特有の症状ではないため、見過ごされることが少なくありません。また、パソコンのタイピングをしづらくなった、以前よりも躓きやすくなったなどの変化を自覚することもあります。
脱力しているときに生じる震えです。自分の意思とは無関係に、手や足、顎などが震えます。動作を開始すると震えはとまります。運動症状の中で最も多い初発症状と考えられています。また、安静時振戦の原因は、大部分がパーキンソン病とされています。気になる点がある場合は十分な注意が必要です。
身体をうまく動かせなくなることを指します。動作が遅くなるほか、動作の開始にも時間がかかります。椅子から立ち上がる動作などで目立ちやすくなるでしょう。細かな動作をしにくくなる点もポイントです。また、表情が乏しくなる、瞬きの回数が少なくなる、声が小さくなる、字が小さくなるなどの症状も現れます。
筋肉の緊張が続いて(力を抜くことができず)、スムーズに動けなくなることです。第三者が、手や足などの関節を動かすと、歯車を回しているようなガクガクといった強い抵抗を感じます(=歯車現象)。本人が自覚していないケースが多い点もポイントです。筋強剛・筋固縮で、痛みを伴うことや顔の筋肉が緊張して無表情に見えることもあります。
身体のバランスをとりにくくなることです。具体的には、身体が傾いたときに戻の姿勢に戻りにくくなります。したがって、転倒しやすくなります。第三者に押されると姿勢を保てない、歩き始めると次々と足が出てしまうなどが考えられるでしょう。姿勢反射障害は、発症後、数年を経過してから現れます。最初から現れることは、基本的にありません。初期症状とはいいにくいですが、4大症状のひとつであるため注意が必要です。
前述の通り、パーキンソン病では非運動症状も現れます。代表的な非運動症状は次の通りです。
分類 | 症状 |
自律神経症状 | 便秘・排尿障害・起立性低血圧・発汗 |
認知・精神障害 | 認知機能の低下・抑うつ・妄想・幻覚 |
睡眠障害 | レム睡眠行動異常・不眠 |
非運動症状は運動症状より前に現れると考えられていますが、これらの症状からパーキンソン病に気づくことは難しいといえるでしょう。心身の変化を感じた場合、医療機関を早めに受診することが大切です。
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ここからは、一般的に勧められているパーキンソン病の予防法を紹介します。
運動をするとドパミンが分泌されることがわかっています。したがって、パーキンソン病の予防につながる可能性があるといわれています。具体的な運動として、ストレッチやウォーキング、水泳などがあげられます。体力にあわせて行うことと運動習慣を身に着けることが大切です。
前述の通り、慢性的なストレスはパーキンソン病のリスクを高める恐れがあります。ストレスを溜めすぎないように心がけましょう。ストレスは、楽しいことに没頭すると解消できます。また、楽しいことに没頭するとドパミンが分泌される可能性もあります。熱中できる趣味を見つけるとよいかもしれません。
食生活が乱れている方は見直しを進めましょう。栄養バランスの偏りは、脳にも悪影響を与える恐れがあるためです。残念ながら、これさえ食べればパーキンソン病を予防できるといった食べ物はありません。健康的な食事を継続することが大切です。
カフェインの摂取も、パーキンソン病の予防につながる可能性があります。過去の研究でリスク低下と関連する因子としてあげられているためです。ネスレが発表した資料で以下の点が示されています。
コーヒーを飲まない人に比べて飲む人ではパーキンソン病のリスクが有意に低下すること,コーヒー3杯/日程度で最もリスク低下がみられ(相対危険度0.71;95%信頼区間0.64~0.79),コーヒー3杯/日以上でのリスク低下はほぼ同程度であると報告されています
順天堂大学医学部付属順天堂医院 脳神経内科教授 服部信孝氏が、米国食事摂取基準2015年版の諮問委員会の報告書を紹介する形で示しています。コーヒーが好きな方は、積極的に摂取するとよいかもしれません。
ここでは、パーキンソン病になりやすい性格について解説しました。はっきりとしたことはわかっていませんが、過去に行われた研究で非社交的な性格などとの関連性が示唆されています。また、感情の起伏が少ない性格も一般的には注意が必要といわれています。心配な方は、自身の性格を見直してみるとよいかもしれません。気になる症状が現れている方は、できるだけ早く医療機関で相談しましょう。
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監修者
花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。