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インフォーマルケアとは|特徴やフォーマルケアとの違いを詳しく紹介

インフォーマルケアとは?フォーマルケアとの違いやサービス例を解説
「近所の方がゴミ出しの日に声をかけてくれる」「遠方の家族が毎日安否確認の電話をくれる」。これらも、高齢者の生活を支える重要な「インフォーマルケア」の一つの形です。
高齢の方がこれまで通り慣れ親しんだ地域で暮らし続けるためには、介護保険などの公的サービスだけでは対応しきれない場面も少なくありません。そうした隙間を埋める存在として、インフォーマルケアが重要視されています。
本記事では、インフォーマルケアが具体的にどのようなものか、公的サービスである「フォーマルケア」とどう違うのか、そして現代においてなぜインフォーマルケアが求められているのかを分かりやすく解説します。
インフォーマルケア(非公式介護)とは

インフォーマルケアとは、公的な制度の枠組みによらない、非公式なサポート活動の総称です。 具体的には、家族や親戚、友人、近所の方々、地域のボランティア団体、NPO法人、さらには民間の有料サービスなどが提供する支援がこれに該当します。
これに対し、介護保険や医療保険のような公的制度を根拠として専門家が提供するサービスを「フォーマルケア(公式介護)」と呼びます。 インフォーマルケアは、このフォーマルケア以外の、より自由で多岐にわたる支援全体を指す言葉です。
インフォーマルケアの特徴
インフォーマルケアの最大の特色は、介護保険制度の対象外のサービスである点です。 そのため、要介護認定を受けていなくても、誰でも必要に応じて利用することができます。 また、支援の対象がサービスを受ける高齢者本人に限定されず、介護を担う家族にまで及ぶことも大きな特徴です。
提供されるサービスは、近隣住民による「ゴミ出しの声かけ」や「散歩中の見守り」といった自発的なものから、民間事業者が展開する「配食サービス」や「家事の代行」などの有料サービスまで、非常に幅広いものとなっています。
インフォーマルケアのメリット
インフォーマルケアを活用することには、主に次のような利点があります。
- 制度の枠にとらわれない幅広いサービス: 介護保険のルールでは対応が難しい、趣味のための外出同行やペットの世話、普段やらないような大掃除なども依頼することが可能です。
- 時間や回数の制約が少ない柔軟な対応: 早朝や夜間帯、ごく短時間での利用など、サービス利用者の個別の都合に応じた柔軟な対応が期待できます。
- 家族もサポートの対象になる: 介護者が休息を取る(レスパイト)ための支援や、家事の負担を軽くするサービスなど、介護を行う家族を支える目的でも利用できます。
インフォーマルケアのデメリット
その一方で、インフォーマルケアを利用する際には注意が必要な点も存在します。
- サービスの質や専門性が一定でない場合がある: サービスを提供する担い手によって、知識や技術力にばらつきが生じる可能性があります。
- 支援が安定的でないことがある: 特にボランティアや近隣住民の善意による支援の場合、担い手の個人的な事情によって継続が困難になるケースも考えられます。
- トラブル時の責任の所在が曖昧な場合がある: 個人間の協力関係においては、万が一の事故や問題が発生した際に、責任の所在を明確にしにくいことがあります。
- 費用が全額自己負担となる: 民間企業による有料サービスは公的な費用補助がないため、利用するサービスによっては費用が高額になる可能性があります。
インフォーマルケアとフォーマルケアの違い

インフォーマルケアとフォーマルケアの主な相違点を、下表に整理しました。
【インフォーマルケアとフォーマルケアの違い】
| インフォーマルケア | フォーマルケア | |
| 根拠 | 制度に基づかない自発的な支援や民間契約 | 介護保険法などの法律・制度 |
| 担い手 | 家族、近隣住民、ボランティア、民間企業など | 国や自治体から指定を受けた事業者(専門職) |
| サービス内容 | ・ルールや制約が少なく、個別要望に対応しやすい ・サービスの質や安定性は担い手による |
・提供できるサービス内容や手順はルール化されている ・専門職による安定した質のサービスが受けられる |
| 費用 | 無償、または全額自己負担の有償 | 原則1〜3割の自己負担 |
フォーマルケアである介護保険サービスは、「要介護認定を受けている必要がある」「提供サービスは日常生活の支援に限定される」といった制約があります。 例えば、庭の手入れや、お祝い事のための特別な食事の準備といった内容は対象外となります。
年齢を重ねてもその人らしい豊かな生活を送るためには、フォーマルケアで対応できない範囲をインフォーマルケアによって補完していく視点が重要です。
なぜ今、インフォーマルケアが必要なのか

近年、インフォーマルケアが持つ役割の重要性はますます高まっています。 その背景にある理由を解説します。
フォーマルケアだけでは支えきれない現実
日本の高齢化は急速に進んでおり、総務省の統計によれば、2021年時点で総人口における65歳以上の比率は28.9%に達しました。 これに比例して介護を要する人も増加の一途をたどっており、将来的には介護保険制度の財源や介護を担う人材が不足し、公的なサービスだけでは十分な支援を提供することが難しくなる可能性が懸念されています。

引用:総務省統計局「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)」
また、既に述べたようにフォーマルケアには利用上のルールが存在し、利用者一人ひとりの細かな要望に応えることが難しい側面もあります。 こうした課題を補い、個々の状況に即した支援を実現する上で、インフォーマルケアの役割は不可欠と言えます。
「地域包括ケアシステム」の重要な一翼を担う
現在、国は高齢者が要介護状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで送れる社会を目指し、「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。
このシステムは、医療・介護・介護予防・生活支援・住まいを地域で一体的に提供する仕組みであり、インフォーマルケアは主に「生活支援」の重要な担い手として期待されています。 地域住民による見守りや互助活動といったインフォーマルケアは、高齢者の社会的な孤立を防ぎ、地域社会との結びつきを維持する上でも大きな役割を担っています。
インフォーマルケアのサービス事例

経済産業省などが公開している事例集を基に、インフォーマルケアの具体的なサービス例をいくつか紹介します。
- 家事代行・生活支援サービス: 料理や掃除といった日常的な家事のサポートから、電球の取り替えや家具の移動、病院への付き添いまで、日々の暮らしにおける「少しだけ手伝ってほしい」というニーズに応えるサービスです。
- 配食サービス: 栄養面に配慮された食事を定期的に自宅まで届けてくれるサービスです。 買い物の手間を省くだけでなく、配達スタッフによる安否確認という側面も持ち合わせています。
- NPO法人などによる柔軟なケアサービス: 24時間365日体制で、利用者の多様な要望にきめ細かく対応する自費の訪問介護サービスです。 介護保険の範囲では難しい長時間の見守りや外出のサポートなども行います。
これらの事例が示すように、インフォーマルケアはフォーマルケアではカバーしきれない、細やかなニーズへの対応を可能にします。
まとめ:フォーマルとインフォーマルを上手に組み合わせ、豊かな暮らしを

フォーマルケアとインフォーマルケアは、どちらか一方が優れているという関係ではありません。 両者を車の両輪のようにバランス良く活用することで、高齢期の生活をより安心で豊かなものにしていくことができます。
介護保険による専門的な支援(フォーマルケア)を生活の基盤としつつ、インフォーマルケアを用いて趣味や人との交流といった日々の楽しみを維持していく。これが、住み慣れた環境で自分らしく生活を続けるための鍵となるでしょう。
それでもなお、ご自宅での生活に不安が大きくなった場合には、施設への入居も有力な選択肢となります。
『有料老人ホームスーパー・コート』では、ホテル事業を通じて培ったノウハウを活かした「おもてなしの介護」を基本とし、ご入居者様が安心して生き生きとした毎日を送れるよう支援しています。
施設での具体的な暮らしやサービス内容について、ホームページやお電話にて、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。







