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認知症の初期症状チェックリスト|早期発見の重要性や進行したときに起こる症状も解説

認知症の初期症状チェックリスト|早期発見の重要性や進行したときに起こる症状も解説

認知症の初期症状チェックリスト

「最近、親の物忘れが気になるけれど、認知症の始まりだろうか?」「以前と少し様子が違う気がするけど、何かの病気?」など、ご高齢の親御さんについて心配に思うことはありませんか。
認知症は、できるだけ早い段階でその兆候に気づき、適切な対応を始めることが、その後のご本人とご家族の生活の質を保つ上で極めて重要です。根本的な治療は難しいとされていますが、早期に治療やケアを開始することで、症状の進行を穏やかにし、ご本人がより良い状態を長く維持することにつながります。
この記事では、ご家族が変化に気づくきっかけとなる認知症の初期症状や、ご家庭で使えるチェックリストについて解説します。ぜひ参考にしていただき、認知症の早期発見にお役立てください。

そもそも認知症とは?代表的な4種類と原因

医師が高齢女性に脳の模型を見せながら説明している
認知症とは、脳の疾患や障害など様々な原因によって認知機能が低下し、日々の生活全般に支障をきたすようになった状態を指します。
認知症を発症すると、記憶力や判断力が衰え、時間や場所の感覚が不確かになったり、段取りを踏んだ行動が苦手になったりと、日常生活に多岐にわたる影響が生じます。
認知症には多くの種類が存在しますが、特に代表的なのは以下の4つです。

  • ✓アルツハイマー型認知症
  • ✓レビー小体型認知症
  • ✓血管性認知症
  • ✓前頭側頭型認知症

アルツハイマー型認知症

脳内にアミロイドβといった特殊なたんぱく質が蓄積することで神経細胞が損傷し、脳が萎縮することで発症します。
日本の認知症の中で最も多く、全体の約7割を占めると言われています。主な症状には記憶障害や見当識障害(時間や場所が分からなくなること)などがあります。早期からの治療により、進行を遅らせることが期待されます。

レビー小体型認知症

脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質の塊が出現することが原因で発症します。
実際には存在しないものが見える「幻視」や、手の震え、小刻みな歩行といった「パーキンソン症状」など、特有の症状が見られるのが特徴です。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血といった脳血管の病気が原因で発症する認知症です。脳卒中などを繰り返すたびに、段階的に症状が進行するケースがあります。
症状は損傷を受けた脳の部位によって異なり、記憶障害のほかに手足の麻痺や言語障害を伴うこともあります。できることとできないことの差が顕著に現れる「まだら認知症」も特徴の一つです。

前頭側頭型認知症

脳の frontotemporal lobes (前頭葉と側頭葉) が萎縮することで発症します。他の認知症と比較して発症年齢が若い傾向にあり、65歳未満で発症する若年性認知症の原因疾患となることもあります。社会的なルールを守れなくなったり、同じ行動を何度も繰り返したりといった、性格の変化や行動異常が目立つのが特徴です。

認知症の初期症状チェックリスト

チェックリストに記入するシニア女性
認知症の初期段階で見られる変化には、以下のようなものがあります。

  • ✓物忘れが目立つようになる
  • ✓理解力や判断力が低下する
  • ✓集中力が続かなくなる
  • ✓時間や場所の感覚が曖昧になる
  • ✓不安感が強まったり、気分が落ち込みがちになる
  • ✓人柄が変わったように感じられる

こうした初期のサインを見逃さずに早期相談へつなげるため、認知症のチェックリストの活用が有効です。
ここでは、東京都福祉保健局が提供するパンフレット「知って安心認知症」に掲載されている「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」をご紹介します。
※このチェックリストはあくまで気づきを促すための目安であり、医学的な診断に代わるものではありません。認知症の診断には、専門の医療機関での受診が必須です。

チェック項目 点数(当てはまるものを一つ選択)
1. 財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがありますか? まったくない
1点
ときどきある
2点
頻繁にある
3点
いつもそうだ
4点
2. 5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか まったくない
1点
ときどきある
2点
頻繁にある
3点
いつもそうだ
4点
3. 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などのもの忘れがあると言われますか まったくない
1点
ときどきある
2点
頻繁にある
3点
いつもそうだ
4点
4. 今日が何月何日かわからないときがありますか まったくない
1点
ときどきある
2点
頻繁にある
3点
いつもそうだ
4点
5. 言おうとしている言葉が、すぐに出てこないことがありますか まったくない
1点
ときどきある
2点
頻繁にある
3点
いつもそうだ
4点
6. 貯金の出し入れや、家賃や公共料金の支払いは一人でできますか 問題なくできる
1点
だいたいできる
2点
あまりできない
3点
できない
4点
7. 一人で買い物に行けますか 問題なくできる
1点
だいたいできる
2点
あまりできない
3点
できない
4点
8. バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できますか 問題なくできる
1点
だいたいできる
2点
あまりできない
3点
できない
4点
9. 自分で掃除機やほうきを使って掃除ができますか 問題なくできる
1点
だいたいできる
2点
あまりできない
3点
できない
4点
10. 電話番号を調べて、電話をかけることができますか 問題なくできる
1点
だいたいできる
2点
あまりできない
3点
できない
4点

チェックが完了したら、10項目の合計点数を確認します。
合計点が20点以上になった場合、認知機能や社会生活において何らかの支障が生じている可能性が考えられます。速やかにかかりつけ医や地域の医療機関、地域包括支援センターなどへ相談することをお勧めします。

認知症が進行したときに起こる症状

物思いにふけるシニア女性
認知症の進行速度には個人差が大きいのが実情です。
ここでは認知症が進行した場合に見られる症状を、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つに分けて解説します。

中核症状の悪化

認知症が進行するにつれて、中核症状の悪化が見られます。
中核症状とは、脳の細胞が壊れることで直接的に発生する症状です。認知症の種類によって現れ方に違いはありますが、認知症の方であれば誰にでも起こりうる症状と言えます。
**代表的な中核症状として、「記憶障害」「見当識障害」「実行機能障害」「失認」「失行」「失語」が挙げられます。

中核症状 具体例
記憶障害
  • 食事を摂ったという体験自体を忘れる
  • 新しい出来事を記憶できない
  • 約束したこと自体を覚えていない
見当識障害
  • 今日の日付や曜日、季節が分からない
  • 通い慣れた道で迷う
  • 人の顔や名前が分からなくなる
実行機能障害
  • 料理など、段取りが必要な作業ができない
  • 家電製品の操作が困難になる
失認
  • 目の前にある物が何かを認識できない
  • 時計の針が示す時刻が分からない
失行
  • 衣服の着方が分からなくなる
  • 箸や歯ブラシといった道具の使い方が分からない
失語
  • 物の名前が思い浮かばない
  • 「あれ」「それ」といった代名詞での表現が増える

行動・心理症状(BPSD)の出現

認知症が進行して中核症状が現れると、ご本人の元々の性格や気質、周囲の環境や人間関係などが作用し、二次的な症状が現れることがあります。
これを行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)**と呼びます。(以前は「周辺症状」という呼称が一般的でした)
具体的には、以下のような精神症状や行動の変化がこれに該当します。

  • ✓妄想(ものを盗られた、など)
  • ✓幻覚・幻視
  • ✓抑うつ・不安・焦燥
  • ✓せん妄
  • ✓睡眠障害
  • ✓徘徊
  • ✓暴力・暴言
  • ✓介護への抵抗
  • ✓過食・異食(食べ物でないものを口にする)

BPSDは、ご本人の性格や周囲の人々の関わり方、生活環境などによって現れ方が大きく異なり、必ずしも全ての症状が出るわけではありません。適切なケアや環境を整えることで、症状を和らげたり、出現を予防したりすることが可能とされています。

認知症の初期症状に関するよくある質問

シニア夫婦が医師に相談している
最後に、認知症の初期症状についてよく寄せられる質問にお答えします。

思い込みが激しいのは認知症の初期症状?

思い込みが激しくなることは、認知症の症状の一つである可能性があります。特に、財布などを自分で置いた場所を忘れ、「誰かに盗まれた」と確信する「もの盗られ妄想」は代表的な症状です。これは認知機能の低下に伴う不安や混乱が原因と考えられています。ご本人に病識がないことがほとんどであるため、周囲の方が変化に気づいてあげることが大切です。

認知症の初期症状で性格が変わることはある?

はい、性格が変化したように見えることがあります。認知症の初期段階では、今までできていたことができなくなることへの不安や焦りから、イライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりします。また、意欲そのものが低下し、以前は熱中していた趣味に関心を示さなくなったり、外出を嫌って家に引きこもりがちになったりすることもあります。

認知症で顔つきが変わるのはなぜ?

認知症の進行に伴って無気力・無関心(アパシー)な状態になると、外部からの刺激に対する反応が少なくなり、表情が乏しくなることがあります。気分が落ち込み、表情が硬くなることで、顔つきが変わったように感じられるのです。「ぼーっとしていることが増えた」「表情が乏しくなった」と感じる場合、認知症のサインである可能性も考えられます。

認知症が一気に進む原因は?

認知症の症状が急に悪化したように感じられる場合、次のような要因が影響している可能性があります。

  • ✓入院や引っ越しといった急な環境の変化
  • ✓役割を失い、脳への刺激が減少すること
  • ✓周囲から叱責されるなど、強い精神的ストレス
  • ✓他の身体的な病気の発症や、薬の副作用

これらの要因は、特にBPSD(行動・心理症状)の悪化を招くことがあります。ご本人が安心して過ごせる環境作りが大切です。
関連記事:認知症が一気に進む原因とは?原因と進行を遅らせる方法を紹介

認知症と勘違いされやすい症状とは?

加齢に伴う自然な物忘れや、高齢期うつ病、せん妄といった他の状態が、認知症と間違われることがあります。
例えば、加齢による物忘れが「体験の一部」を忘れるのに対し、認知症における物忘れは「体験したことそのもの」を忘れてしまうという違いがあります。これらの症状をご家族だけで見極めるのは困難なため、気になる変化があれば専門医に相談することが重要です。
関連記事:せん妄とは?認知症との違いや原因、治療方法をわかりやすく解説

認知症は初期症状を見逃さず早期発見・早期対応をしよう

介護スタッフと笑顔で話すシニア女性
認知症は、誰にとっても他人事ではない身近な病気です。
ご家族の「少し様子がおかしいな」という気づきが、早期発見と早期対応への最初の重要な一歩となります。早い段階で適切なサポートを開始することで、症状の進行を緩やかにし、ご本人やご家族が安心して過ごせる時間をより長く保つことができます。
もし認知症の方への適切なケアに不安を感じるようであれば、介護施設の利用を検討することも一つの有効な選択肢です。
有料老人ホーム「スーパー・コート」では、お一人おひとりの「したいこと」「好きなこと」「できること」を尊重する認知症ケアを実践しています。
ご入居者様が夢や目標を持ち、いきいきとした毎日をお過ごしいただけるよう、スタッフが一丸となってサポートいたします。
有料老人ホームスーパー・コートの認知症ケアの取り組みはこちら→認知症ケア
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監修者

監修者の写真

花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。

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