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残存機能を活かす介護とは?介護のポイントや残存機能を引き出す方法

残存機能を活かす介護とは?生活の質を高めるポイントと具体的な方法を解説
「介護の現場でよく聞く『残存機能』とは、一体どういう意味なのだろう?」
ご家族の介護に携わる中で、このような疑問を抱いたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
残存機能を活かす介護とは、加齢や病気が原因でサポートが必要になった方が、今なお持っている心と身体の能力を最大限に引き出し、できる限り自立した暮らしを続けられるよう支えるという、介護における基本的な考え方です。
このアプローチは、ご本人の機能維持や向上はもちろんのこと、介護を担うご家族の負担を軽くすることにも寄与します。
この記事では、残存機能に焦点を当てた介護の重要性、実践のための具体的なポイント、そして専門施設で行われているアプローチについて詳しく掘り下げていきます。
「残存機能を活かす介護」の基本的な考え方

本人の「できること」に着目した介護
残存機能を活かす介護は、高齢や障がいにより支援を必要とする方に対し、単に「できなくなったこと」を補うのではありません。今もなお「できること」に光を当て、その能力を日常生活の中で存分に発揮できるようサポートする介護手法です。
あくまで介助が必要な部分だけを的確に手助けし、ご自身の力で可能なことは本人に委ねることで、心身機能の維持、さらには向上を図ることを目指します。
かつての日本では、身の回りの世話を全面的に行う介護が一般的とされていました。しかし、過剰な手助けはご本人が能力を発揮する機会を奪い、結果として心身の衰弱を早めてしまうことがわかってきました。そのため今日では、ご本人の自立を促す、残存機能を重視した介護が標準的な考え方となっています。
「残存機能」という言葉の言い換え
「残存機能」は医療・介護分野の専門用語ですが、言葉の響きが「失われたものの中から残った機能」というネガティブな印象を与える可能性があります。そのため、近年では次のような、より前向きな言葉で表現されることが増えています。
- ✓保有能力
- ✓現有能力
- ✓本人が今もっている力
残存機能の具体的な例
何が残存機能にあたるのかを一つに定義することは容易ではありません。
加齢による身体の変化、認知症の進行度合い、病後の状態は一人ひとり違うため、その人が「現在できること」も千差万別だからです。本人が自力で行えるすべての事柄が、その人の残存機能と捉えられます。
残存機能の具体的な例をいくつか見てみましょう。
- ✓加齢で足元がおぼつかなくても、杖や歩行器を使えば自分のペースで歩くことができる
- ✓病気の後遺症で利き手が不自由でも、もう片方の手を使って食事をすることができる
- ✓立ち上がるのは難しくても、椅子に座ったまま床の物を拾うことができる
残存機能を活かすと、生活の質(QOL)が向上する
残存機能を積極的に活用することは、ご本人の生活の質(QOL)を大幅に高めることにつながります。
「自分の力で成し遂げられた」という経験は自信を育み、さらなる挑戦への意欲をかき立てます。たとえ介護が必要になったとしても、「できること」に目を向け、日々の生活で役割を持つことは、その人ならではの充実した人生を送る上で不可欠です。
なぜ高齢者の残存機能は低下してしまうのか

加齢による心身の機能低下は誰にでも起こりうることですが、その進行には「意欲の低下」が深く影響しています。
- 健康面の変化:筋力や視力、聴力が弱まったり、物忘れが増えたりすると、先行きへの不安感から「自分にはもう何もできない」という悲観的な考えに囚われ、活動的でなくなる傾向があります。
- 社会的な役割や交流の減少:退職や子供の自立、近しい人との別れなどをきっかけに、「社会での居場所がなくなった」と感じ、生きる意欲が減退することがあります。
- 経済的な懸念:年金を主な収入源とする生活では、将来の医療費や介護費への不安が、趣味や人付き合いといった楽しみを遠ざけ、生活の彩りを失わせてしまう一因となり得ます。
在宅介護で残存機能を活かす7つのポイント

ご自宅での介護にこれから紹介するポイントを取り入れると、本人の能力を引き出しつつ、介護する側の負担軽減にもつながるでしょう。
1. 過介護(手伝いすぎ)を避ける
「介助したほうが効率的」「見ていて不安」といった理由で、本人が自力でできることまで手を出してしまう「過介護」は控えなければなりません。 たとえ時間がかかっても、安全を確保した上で本人に任せる姿勢が、能力の維持には不可欠です。
2. 本人の主体性を尊重する
本人が「何をしたいか、どうありたいか」という意思を尊重し、自分で選択する場面を大切にすることが重要です。 たとえば、その日に着る服を共に考えたり、献立の希望を聞いたり、日常の些細な事柄でも自己決定を重ねることが、主体性を養うことにつながります。
3. 安全に動ける環境を整える
転倒などの事故を防ぎ、本人が不安なく活動できる住環境を整備することも大切です。
- ✓廊下、トイレ、浴室といった場所に手すりを取り付ける
- ✓床の小さな段差をなくす
- ✓歩行器や杖といった福祉用具を適切に利用する
住宅の改修や福祉用具のレンタルには介護保険が適用されるケースも多いので、担当のケアマネジャーに一度問い合わせてみることをお勧めします。
4. 社会とのつながりを保つ
内閣府の調査によると、近隣住民との交流が盛んな高齢者ほど、生きがいを強く感じているという結果が出ています。
地域の交流会や趣味のサークル、デイサービスの活用などを通じて、家族以外の他者と関わる時間を作ることが、心と身体を健やかに保つ鍵となります。
5. 離れて暮らす家族や親族の視点も取り入れる
日々介護に携わっていると、本人が「できること」に気づきにくくなる場合があります。 時々訪れる親族など、少し距離のある第三者だからこそ、「これはまだ自分でできるかもしれない」という客観的な発見につながることがあります。
6. 介護サービスを上手に利用する
訪問介護(ホームヘルパー)や訪問リハビリテーションといった、専門家のサポートを積極的に活用するのも一つの方法です。 プロフェッショナルの視点から、本人が持つ能力を引き出すための具体的な助言や支援を得ることが可能です。
7. 介護施設への入居も選択肢に
自宅での介護に限界を感じ始めたときには、介護施設への入居をポジティブな選択肢として検討する価値があります。 専門的な知識を持つスタッフの支援を受けながら、安全が確保された環境で機能訓練やレクリエーションに参加できます。
介護施設で実践されている残存機能を引き出す方法

多くの介護施設では、利用者の残存能力を最大限に引き出すための多様なプログラムが用意されています。
- 生活リハビリ:掃除、洗濯、調理などの日常的な家事を、職員の介助を受けながら可能な範囲で自分で行います。
- 集団体操:着座したまま行える体操やタオルを用いたストレッチなどを、他の利用者とコミュニケーションを取りながら楽しみます。
- マシントレーニング:高齢者の身体に配慮して作られた専用機器を使用し、安全に配慮しながら筋力アップを目指します。
- レクリエーション:書道、園芸、カラオケ、季節ごとのイベントなど、個々の趣味や関心に応じた活動を通して、楽しみながら心身の活性化を図ります。
これらの集団活動は、他者とのコミュニケーションを促進し、新たな社会的役割や生きがいを発見する良い機会となります。
残存機能を活かすなら、有料老人ホームスーパー・コートへ

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- ✓認知症ケア専門士をはじめとする専門職が、ご入居者様の個性や意欲を尊重したケアプランをご提案します。
- ✓専門の指導員がサポートする、高齢者向けのマシントレーニング「SC-Fit」を導入しています。
- ✓書道や園芸、音楽鑑賞会など、日々の生活を豊かにする多彩なレクリエーションを企画・実施しています。
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監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。







