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高齢者の便秘が危険な5つの理由とは|便秘の原因や解消法も詳しく解説

高齢者の便秘が危険な5つの理由|原因と今日からできる解消法を解説
「年を重ねてから、便秘がちになった」「お腹が張って気分がすっきりしない」。高齢になり、このようなお悩みはありませんか。
便秘に悩む人の割合は、年齢とともに増加する傾向にあります。「たかが便秘」と軽く考えがちですが、高齢者の便秘はQOL(生活の質)を低下させるだけでなく、時には命に関わる病気の引き金になることもあるため注意が必要です。
この記事では、高齢者の便秘に潜む5つの危険な理由と、その原因、そして日常生活でできる解消法について詳しく解説します。
高齢者の便秘に潜む5つの危険な理由

便秘は腹痛や食欲不振、痔などさまざまな不快な症状を引き起こします。しかし、単なる不快感にとどまらず、放置すると以下のような深刻な健康リスクにつながることがあります。
1. 排便時のいきみによる血圧の急変動
便秘で硬くなった便を排出しようと強くきばると、血圧が急激に上昇します。これが引き金となり、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気を発症する危険性があります。特に、冬場の寒い時期は血圧が上がりやすいため、より注意が必要です。
また、排便後には副交感神経の働きで血圧が急降下しやすく、この急激な血圧の変動は心臓や血管に大きな負担をかけます。時には、排便時の刺激が自律神経(迷走神経)を過剰に興奮させ、血圧低下から失神(排便失神)に至るケースもあります。
2. 免疫機能の低下
便秘によって腸内環境が悪化すると、免疫機能が低下する可能性があります。体内の免疫細胞の約7割は腸に集中していると言われており、腸は体最大の免疫器官です。便秘で悪玉菌が増えると、腸の免疫システムが正常に働かなくなり、感染症などにかかりやすくなります。
高齢者は加齢だけでも免疫機能が低下する傾向にあるため、便秘によるさらなる機能低下は避けなければなりません。
3. 腸閉塞(イレウス)の発症
便秘が悪化し、たまった便が腸内でカチカチに硬くなることで、腸が詰まってしまう「腸閉塞(イレウス)」を引き起こすことがあります。腸閉塞になると、激しい腹痛や嘔吐といった症状が現れ、緊急手術が必要になることも。最悪の場合、腸が壊死して命を落とす危険もある怖い病気です。
4. 大腸がんが隠れている可能性
急に便秘がひどくなった、便秘と下痢を繰り返すといった症状の裏に、大腸がんが隠れている可能性があります。がんが大きくなることで大腸の内側が狭くなり、便が通りにくくなって便秘を引き起こすのです。
国立がん研究センターの統計によれば、大腸がんは日本人で最も罹患数の多いがんです(2019年データ)。便秘は進行した大腸がんで見られる症状の一つでもあるため、「いつものこと」と放置せず、気になる症状があれば医療機関を受診することが重要です。
5. 腸管穿孔(穴が開く)のリスク
便秘は「大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)」の原因になることがあります。憩室とは、便秘などによる腸管内の圧力上昇で、腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出したものです。この憩室に便が詰まって細菌が繁殖し、炎症を起こすのが憩室炎です。
憩室炎が悪化すると、腸の壁に穴が開いて(腸管穿孔)、便がお腹の中に漏れ出し、命に関わる「腹膜炎」を引き起こす危険性があります。
高齢者に多い便秘の種類

日本の『慢性便秘症診療ガイドライン』では、「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」を便秘と定義しています。毎日排便があっても残便感があれば便秘ですし、3日に1回でもすっきり出ていれば便秘ではないこともあります。
便秘は原因によっていくつかの種類に分類され、高齢者では特に以下のタイプが多く見られます。
| 高齢者に多い便秘の種類 | 特徴 |
| 弛緩(しかん)性便秘 | 加齢による筋力低下で大腸のぜん動運動が弱まり、便を押し出す力が低下して起こる。便が腸内に長く留まるため、水分が吸収されて硬くなりやすい。 |
| 直腸性便秘 | 便が直腸まで下りてきているのに、便意を感じる神経が鈍くなり排便できない。便意の我慢の繰り返しや、寝たきりの方などに多い。 |
| 薬剤性便秘 | 特定の薬の副作用で腸の動きが抑制されて起こる。医療用麻薬、一部の降圧薬、抗うつ薬などが原因となることがある。 |
急な便秘や腹痛を伴う場合は、前述の病気が隠れている可能性もあるため、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
高齢者が便秘になる4つの主な原因

- 身体機能の低下:加齢により、食事量の減少、筋力(特に腹筋)の低下、腸のぜん動運動の衰えなどが起こり、便を作りにくく、また排出しにくくなります。
- 水分摂取量の不足:のどの渇きを感じにくくなったり、トイレが近くなることを懸念して水分を控えたりすることで、水分不足になりがちです。水分が足りないと便が硬くなり、便秘の原因となります。
- 腸内環境の悪化:年齢とともに腸内の善玉菌(ビフィズス菌など)が減少し、悪玉菌が優勢になる傾向があります。これにより腸の働きが鈍り、便秘につながります。
- 薬の副作用:高血圧やパーキンソン病、うつ病など、高齢者が服用する機会の多い薬の中に、副作用として便秘を引き起こすものがあります。
今日からできる!高齢者の便秘解消法

厚生労働省の「2022年 国民生活基礎調査」によると、便秘の自覚症状がある人の割合は60代後半から男女ともに増加し、80歳以上では男性のほうが女性より多くなります。深刻な悩みに対応するため、生活習慣の改善による解消法を紹介します。
(参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」)
1. 3食規則正しく、バランスの良い食事
規則正しい食事は、生活リズムと腸の働きを整える基本です。特に朝食は、睡眠中に休んでいた胃腸を動かし、自然な便意を促す「胃結腸反射」のスイッチを入れる重要な役割があります。便秘解消に効果的な以下の食品を意識して摂りましょう。
| 食品の種類 | 働きと含まれる食品 |
| 食物繊維 | 便のカサを増やし、善玉菌のエサになる。 【水溶性】海藻、果物、オクラ、こんにゃく 【不溶性】きのこ、豆類、ごぼう、穀類 ※2種類をバランスよく摂ることが大切。 |
| 発酵食品 | 善玉菌そのものを補給し、腸内環境を整える。 ヨーグルト、納豆、味噌、チーズ、キムチなど。 |
| オリゴ糖 | 善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やす。 玉ねぎ、ごぼう、バナナ、大豆、はちみつなど。 |
| 良質な油 | 便の滑りを良くする潤滑油の役割。 オリーブオイル、亜麻仁油、えごま油など。(摂りすぎに注意) |
2. こまめな水分補給
便を柔らかくするために、こまめな水分補給が欠かせません。食事以外に1日1〜1.5リットルを目安に、水やお茶などを飲む習慣をつけましょう。特に、朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲むと、腸が刺激されて動き出しやすくなります。
3. 無理のない範囲での適度な運動
ウォーキングなどの適度な運動は、血行を促進し腸のぜん動運動を活発にします。また、排便に必要な腹筋を維持する効果も期待できます。散歩やラジオ体操など、体に負担の少ない運動を毎日続けることが大切です。
4. 排便習慣をつける
便意がなくても、毎日決まった時間(特に朝食後)にトイレに座る習慣をつけましょう。これを繰り返すことで、体が排便のリズムを思い出し、自然な便通につながりやすくなります。便意を感じたら我慢しないことも重要です。
まとめ:便秘を解消し、健やかな毎日を

高齢者の便秘は、単なる不快な症状ではなく、命に関わる危険な病気のサインである可能性も秘めています。生活習慣を見直すことで改善することも多いですが、急な便秘や強い腹痛がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。
もしご自身でバランスの取れた食事の準備や、規則正しい生活を送ることに不安を感じる場合は、老人ホームへの入居も一つの選択肢です。
『有料老人ホームスーパー・コート』は、ホテル事業のノウハウを生かした「おもてなしの介護」を実践。管理栄養士が監修したバランスの良いお食事はもちろん、専門指導員による高齢者向けトレーニングなど、ご入居者様が健康でいきいきとした毎日を送れるようサポートしています。
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監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。







