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高齢者のリロケーションダメージとは?リスク・予防・対処法を紹介!

高齢者のリロケーションダメージとは?4つのリスクと予防・対処法を解説
「親の介護施設への入居を考えているけれど、環境が変わって心身に不調をきたさないか心配」「リロケーションダメージって何?」
高齢のご家族の住み替えを検討する中で、このような不安を抱く方は少なくありません。
リロケーションダメージとは、引っ越しや入院といった住環境の変化が強いストレスとなり、心身に様々な悪影響を及ぼすことです。
特に高齢者は新しい環境への適応が難しく、リロケーションダメージを受けやすい傾向にあります。 しかし、そのリスクを事前に理解し、適切な対策を講じることで、ダメージを最小限に抑えることは十分に可能です。
この記事では、高齢者のリロケーションダメージがもたらす具体的なリスクと、ご家族にできる予防・対策について詳しく解説します。
リロケーションダメージとは、環境変化による心身の不調

リロケーションダメージとは、長年住み慣れた環境から離れることによる精神的なストレスが原因で、心や身体に不調が現れる状態を指します。
これは年齢を問わず誰にでも起こりうることですが、環境の変化に敏感な高齢者、とりわけ認知症のある方で顕著に現れる傾向が見られます。
高齢者の場合、混乱や不安からうつ病やせん妄を発症したり、認知症の症状が急激に悪化したりするケースも少なくありません。
高齢者が転居する主な理由
高齢の方が住環境を変える背景には、様々な理由が存在します。
- ✓一人暮らしや高齢者のみの世帯での生活に不安が生じたための介護施設への入所
- ✓病気やケガの治療を目的とした入院
- ✓介護を目的として子どもの家へ同居する(介護移住)
- ✓災害などによる、やむを得ない転居
特に近年では、離れて暮らす親を呼び寄せたり、希望する介護施設へ入るために地方へ移住したりする「介護移住」が増加しています。 家族が近くにいるという安心感や、費用の軽減といったメリットがある一方で、リロケーションダメージのリスクも高まることを理解しておく必要があります。
リロケーションダメージによって高まる4つのリスク

1. せん妄
リロケーションダメージにおいて最も注意すべき症状の一つが「せん妄」です。 せん妄とは、環境の急激な変化や身体的ストレスなどが引き金となり、一時的に意識が混乱した状態に陥ることを指します。
急に興奮して大声をあげたり、幻覚を見たり、時間や場所が分からなくなったりといった症状が現れますが、原因が解消されれば回復することが多いのが特徴です。
2. うつ病
長年親しんできた地域社会とのつながりや、慣れ親しんだ日々の習慣を失うことは、大きな喪失感につながりかねません。 社会的な孤立感から気分が落ち込み、うつ病を発症するリスクが高まります。 「食欲がない」「よく眠れない」「ぼーっとしていることが増えた」といったサインには注意が必要です。
3. 認知症の発症・悪化
環境の変化が直接的に認知症を引き起こすわけではありませんが、強いストレスが引き金となり、それまで目立たなかった症状が顕在化したり、既存の症状が急激に悪化したりすることがあります。
慣れない環境での混乱や不安が、記憶障害や見当識障害といった症状を助長してしまうのです。
4. 寝たきり
新しい環境に馴染めず、不安から自室に閉じこもりがちになると、日々の活動量が著しく低下します。
活動量の低下は、足腰の筋力低下に直結し、転倒のリスクを増大させます。 そして、転倒による骨折をきっかけに、そのまま寝たきりの状態になってしまうケースも少なくありません。
リロケーションダメージを予防・軽減する5つの対策

ご家族や周囲の方が適切にサポートすることで、リロケーションダメージを和らげ、新しい生活への移行をスムーズにすることが可能です。
1. 環境の変化に少しずつ慣れてもらう
環境の急激な変化がもたらすストレスを緩和するため、段階的に新しい環境に慣れてもらう工夫が効果的です。
- 子ども世帯との同居の場合:まずは週末だけ共に過ごす「お泊まり」から試してみる。
- 施設入居の場合:数日間滞在できる「体験入居(ショートステイ)」を利用し、施設の雰囲気や生活リズムを事前に体験してもらう。
また、転居先に長年愛用してきた家具や思い出の品々を持ち込むことも、本人の安心感につながる有効な方法です。
2. タイミングを検討する:元気なうちの選択肢
心身の機能が低下した後や、認知症が進行してからでは、新しい環境への適応は一層困難になります。
もし将来的な住み替えを視野に入れているのであれば、ご本人が元気で、判断力もしっかりしているうちから検討を始めるのが理想的です。 元気なうちであれば、新しい土地での友人作りや、趣味の活動への参加もより容易になります。
3. 一人になれる空間(テリトリー)を確保する
新しい環境においても、ご本人が一人で落ち着けるプライベートな空間を確保することは、精神的な安定を保つ上で非常に重要です。
- 同居の場合:たとえ手狭であっても、必ずご本人専用の個室を用意しましょう。
- 施設の場合:できるだけ個室が確保できる施設を選びましょう。 相部屋の場合は、カーテンやパーテーションでどの程度プライバシーが保たれるかを確認することが大切です。
4. 不安や不満を話せる時間を作る
環境が変わった直後は、ご本人も多くの不安や戸惑いを抱えています。 定期的に面会したり電話をかけたりして、本音を話せる時間を作ることで、孤独感を和らげ、ご家族も心身の変化にいち早く気づくことができます。
5. 社会とのつながりを再構築する
新しい環境で孤立することを防ぎ、生きがいを見つける手助けをすることも大切です。
地域の高齢者サロンや趣味のサークル、あるいはデイサービスなどを活用し、家族以外の人々と交流する機会を設けることが、心身の活性化につながります。 ただし、あくまでご本人の意思を尊重し、無理強いしないようにしましょう。
まとめ:事前の準備と周囲のサポートで、穏やかな移行を

高齢者のリロケーションダメージは、環境の変化に心が追いつかないことで生じる、心と身体からのSOSサインです。
しかし、そのリスクを正しく理解し、ご家族や周りの人々が本人のペースに合わせて丁寧に支援することで、ダメージを大幅に和らげることが可能です。
施設への入居に伴うリロケーションダメージにご不安を感じる方は、ぜひ「有料老人ホームスーパー・コート」にご相談ください。
スーパー・コートは全室個室でプライバシーが確保されており、ご自宅から愛用の家具をお持ち込みいただくこともできます。 また、多彩なレクリエーションやイベントを通じて、ご入居者様同士やスタッフとの新たな関係作りをサポートし、安心して生き生きと暮らせる環境を整えています。
詳しくは、以下のページよりご確認いただけます。
監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。







