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介護におけるQOL(生活の質)とは?高齢者のQOLを高める取り組みを紹介

「介護が必要な親に、もっと生きがいのある毎日を送ってほしい」
「介護の現場でよく聞く『QOLを高める』とは、具体的にどういうことだろう?」
ご家族の介護に関わる中で、このようにお考えになる方も多いのではないでしょうか。
QOLとは、一人ひとりがその人らしい人生を送り、幸福を実感できているかを示す「生活の質」を意味します。
現代の介護では、ご高齢者の暮らしの満足度を高めるために、このQOLという考え方が非常に重視されています。
本記事では、介護におけるQOLの基本的な意味から、ご高齢者のQOLを高めるために介護者ができる具体的なアプローチまでを解説します。
QOLが低下する原因や、ADL(日常生活動作)との深い関わりについてもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
QOL(生活の質)とは、その人らしい幸福な人生を示す指標

QOLは「Quality Of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略で、日本語では「生活の質」と訳されるのが一般的です。
QOLは、単に生命を維持するだけでなく「一人の人間として満足度の高い生活を送れているか」「その人らしい幸福な生き方ができているか」を測るための大切な指標です。
近年、介護の分野でもこのQOLの向上が強く意識されるようになっています。
ここでは「介護におけるQOL」が具体的に何を意味し、なぜ重要視されるのかを解説します。
介護におけるQOLとは
介護の文脈で使われるQOLとは、「介護を必要とするご高齢者が、精神的・身体的・社会的に満たされ、幸福を実感しながら生活できているか」を示す指標と言えます。
何に生きがいを感じるかは人によって様々であるため、QOLが高い状態を一つに定義することは困難です。しかし、一般的にQOLが高いとされるご高齢者には、次のような特徴が見られます。
- 身体的な苦痛が少なく、日常生活に大きな支障がない
- 家族や友人など、信頼できる人々とのつながりを持っている
- 趣味や地域での活動など、社会的な役割や楽しみがある
- 「誰かの役に立ちたい」という貢献意欲を持っている
- 経済的な不安が少ない
QOLは本人の主観的な感覚に基づくものであり、他人が外から見て簡単に判断できるものではありません。ご高齢者のQOLを考える際には、まずご本人が何を大切に思っているのかを深く理解することが重要です。
介護現場でQOLの視点が大切になる理由
介護においてQOLの視点が重要視されるのは、介護者がご高齢者の価値観を理解し、その人らしさを尊重したケアを実践することで、生活の満足度を直接的に向上させられるからです。
超高齢社会である現代では、「単に長生きする」こと以上に、「自分らしく、より良く生きる」ことが重視されるようになっています。
QOLの向上を目標とした介護は、ご高齢者が生きがいを感じ、幸福な日々を送ることにつながります。
また、ご高齢者のQOLが高まり心身ともに健康な状態が保たれれば、結果的に介護を行う家族の負担軽減にもつながるという側面もあります。
高齢者のQOLが低下する4つの原因

ご高齢者のQOLが低下する背景には、主に4つの要因が考えられます。
- 身体機能・認知機能の低下
- 生活習慣の乱れ
- 社会的な孤立
- 経済的な不安
これらの要因が、心身の不調や精神的なストレスを招き、QOLの低下へとつながっていきます。
身体機能・認知機能の低下
加齢や病気によって身体機能や認知機能が衰えることは、QOL低下の直接的な原因となり得ます。
体に痛みがあったり、以前のように動けなくなったりすると、行動範囲が狭まりストレスを感じやすくなります。
また、「料理を最後まで作れなくなった」「帰り道が分からなくなった」といった認知機能の衰えは、自信や意欲を失うことにつながりかねません。
こうした状態が続くと、不安や抑うつといった精神的な不調を引き起こすリスクも高まります。
生活習慣の乱れ
日々の生活リズムの乱れも、ご高齢者のQOLを低下させる一因です。
高齢になると、食事や運動、睡眠といった生活習慣の自己管理が難しくなることがあります。生活習慣の乱れは、様々な病気の発症リスクを高めてしまいます。
例えば、栄養バランスの偏った食生活は、肥満や生活習慣病の原因となり得ます。
運動不足は、筋力の低下や関節痛、骨粗しょう症を招くだけでなく、認知症のリスクを高めることも分かっています。
社会的な孤立
社会的な孤立も、ご高齢者のQOLを著しく低下させる要因の一つです。
定年退職や子どもの独立、親しい人との別れなどをきっかけに、他者との交流が減少し、社会とのつながりが薄れてしまうことがあります。
社会的な役割を失ったと感じることで自信をなくし、人付き合いを避けるようになってしまうケースも少なくありません。
孤立は強い孤独感やストレスを生み出し、うつ病や認知症の発症リスクを高めることが指摘されています。
経済面での不安
老後の生活資金といった経済的な問題も、QOL低下の大きな要因です。
高齢期には、年金が主な収入源となり現役時代よりも収入が減る一方で、医療費や介護費の負担は増える傾向にあります。
貯蓄や年金だけで今後の生活を維持できるかという心配は、大きな精神的ストレスとなります。
こうした経済的な不安は心の健康を蝕み、うつ病などを引き起こす可能性も秘めています。
QOLとADL(日常生活動作)は密接に関係している

ご高齢者のQOLを考える上で、「ADL」という指標は非常に重要です。
ADLを維持し、自立した生活を送れることは、QOLの向上に直接つながるからです。
ADL(日常生活動作)とは
ADL(Activities of Daily Living)は「日常生活動作」と訳され、人が毎日当たり前に行っている基本的な活動を指します。
介護やリハビリの分野では、ご高齢者の自立度を測るための重要な指標として用いられています。
ADLには、以下のような動作が含まれます。
- 食事:自分で箸やスプーンを使って食べること
- 更衣:自分で衣服の着脱を行うこと
- 移乗:ベッドから車いすへなど、乗り移ること
- トイレ:自分でトイレに行き、排泄を済ませること
- 入浴:自分で体を洗うこと
これらのADLが低下すると、介護の必要度が高まると同時に行動範囲も狭まります。ご高齢者が自立した生活を送るためには、ADLを維持・向上させることが不可欠です。
関連記事:ADL(日常生活動作)とは?種類・評価方法・低下予防のポイントを紹介!
ADLがQOLに与える影響
ご高齢者のADLを維持・向上させることは、QOLを高める上で極めて重要です。
なぜなら、ADLが低下して「できること」が減少すると、QOLを低下させる要因である「身体機能の低下」「精神的ストレス」「社会的な孤立」などが連鎖的に起こりやすくなるからです。
例えば、ADLの低下により一人で外出することが困難になると、友人と会う機会や趣味の活動が減ってしまいます。
それによって生きがいが失われ、孤独感が深まれば、QOLは著しく低下してしまいます。
だからこそ、適切なリハビリなどを通じてADLを保つことが、活動的な毎日と高いQOLの維持につながるのです。
介護者が高齢者のQOLを高める4つの取り組み

ご高齢者のQOLを高めるために、介護者が実践できる4つの大切なアプローチを紹介します。
- ご本人の価値観や楽しみを深く知る
- 「できること」は、できるだけ自分でしてもらう
- 日々の健康管理をサポートする
- 社会とつながる機会を作る
①ご本人の価値観や楽しみを深く知る
ご高齢者のQOLを高める第一歩は、介護者がご本人のことを深く理解することです。
QOLは一人ひとりの主観的な満足度であり、何が幸せかはその人によって全く異なるからです。
例えば、もともと人付き合いが得意でない方に、無理に地域のサークル活動への参加を勧めても、かえってストレスの原因になりかねません。
その人らしいQOLの向上を支援するためには、「何に満足を感じるのか」「どのような時に楽しいと思うのか」を、日々のコミュニケーションを通じて丁寧に聞き取ることが最も大切です。
②「できること」は、できるだけ自分でしてもらう
ご本人が自分でできることは、時間がかかっても自分で取り組んでもらうこと。これもQOLの向上に不可欠です。
良かれと思って何でも手伝ってしまう「介護のしすぎ」は、かえってADLを低下させ、ご本人の自尊心を損なう原因になります。
例えば、まだ歩けるにもかかわらず「その方が早いから」という理由で常に車いすを使っていれば、足の筋力は衰え、本当に歩けなくなってしまうかもしれません。
介護者は、ご本人のADLの状態を客観的に把握し、「見守り」と「手伝い」の適切なバランスを見極める必要があります。
ADLの状態を評価する際は、BI(バーセルインデックス)などの評価法も参考になります。
参考:全国保険医団体連合会「ADL 維持向上等体制加算に係る評価書」
③日々の健康管理をサポートする
ご高齢者の健康管理を支援することも、QOLを高める上で重要です。
健康的な生活習慣は、様々な病気やケガの予防につながります。
また、体が健康であることは、「何かをやってみよう」という意欲や気力の源となり、心の健康にも結びつきます。
「適度な運動の機会を設ける」「栄養バランスの取れた食事を摂る」「十分な睡眠時間を確保する」といった基本的な生活習慣を維持できるよう、介護者はサポートしましょう。
④社会とつながる機会を作る
ご高齢者が社会との結びつきを持ち続けられるよう支援することも、QOLの向上に非常に効果的です。
ご高齢者は、環境の変化などから孤立感や孤独感を抱きやすく、それが心身の健康に悪影響を及ぼすことがあります。
社会と交流できる場は、日々の生活に活気と目的をもたらし、新たな生きがいを見つけるきっかけにもなります。
地域のコミュニティ活動やボランティア、趣味のサークルなど、ご本人の興味に合った社会参加を促してみましょう。人とのつながりはストレスを和らげ、QOLを大きく向上させます。
まとめ:QOL向上には「その人らしい生活」の尊重が不可欠

この記事では、介護におけるQOLの重要性と、QOLを高めるための具体的な取り組みについて解説しました。
介護におけるQOLとは、ご高齢者が身体的・精神的・社会的に満たされ、自分らしい幸福を実感できているかを示す指標です。
QOLは本人の主観的なものであるため、介護においてQOLを高めるには、何よりもまず「その人らしい生活」を深く理解し、尊重することが重要です。
■介護者がご高齢者のQOLを高める取り組みのポイント
- コミュニケーションを密にし、ご本人の価値観や楽しみを理解する
- ご本人の「できること」を見極め、過剰な介護を控える
- バランスの取れた食事や運動、睡眠などの健康的な生活を支援する
- 趣味や地域活動など、社会と交流できる機会作りを支援する
しかし、加齢に伴う心身機能の低下は避けられません。ご自宅での介護だけでは、生活習慣の維持や社会参加が難しくなり、QOLを保つことが困難になる場合もあります。
そのような時に備え、介護サービスや介護施設の情報を集めておくといざという時に安心です。
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監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。







