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iPS細胞を用いたパーキンソン病の治療の現状

iPS細胞を用いたパーキンソン病の治療の現状

パーキンソン病は、身体が動かしにくくなる病気であり、現在の医療では根本的な治療法は確立されていません。
そのようななか、iPS細胞を用いた治験が進んでいることをご存じでしょうか?

そこで本記事では、iPS細胞の概要とともに、パーキンソン病の治療の現状を解説します。
パーキンソン病の治療の最前線を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

そもそもiPS細胞とは

はじめに、iPS細胞の概要を確認しておきましょう。

iPS細胞とは、あらゆる組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ人工多能性幹細胞のことです。
京都大学の山中伸弥教授らの研究で、2006年にマウスの、2007年に人間の皮膚細胞からiPS細胞を作り出すことに成功しました。

そんなiPS細胞は、人間の皮膚や血液などの体細胞に、特定の遺伝子を導入し、培養することで作り出されます。
応用性が高いうえに比較的容易に作り出せるため、再生医療の発展や病気の原因の解明など、さまざまな場面での活用が期待されています。

パーキンソン病を発症する原因

パーキンソン病を発症する原因は、中脳の黒質という部分にあるドーパミン神経細胞が減少し、それに伴って生成されるドーパミンが不足することにあります。
ドーパミンは、意欲や幸福感を得るほか、運動機能を調節するといった脳機能に関わる神経伝達物質です。
この神経伝達物質が不足して、パーキンソン病を発症すると、運動機能の調節に必要な脳からの指令が筋肉にうまく伝わらなくなります。
それゆえに、手足の震えや歩行障害など、さまざまな症状が表れるのです。

しかし残念ながら、ドーパミン神経細胞が減少する理由は解明されていません。
通説では、遺伝や加齢によって、αシヌクレインというタンパク質が神経細胞のなかに凝集・沈着することが原因とされています。
関連記事:パーキンソン病の発症率の男女比は?症状や発症の原因を解説

パーキンソン病の一般的な治療法

冒頭でもお伝えしたとおり、パーキンソン病の根本的な治療法は依然として確立されていません。
しかし、症状の緩和を目的とした治療は施されています。

現在実施されているパーキンソン病の治療は、薬剤投与が主流です。
投与されるのは、ドーパミンの補充や代替、あるいは分解阻害や分泌促進を担う薬剤です。
これにより、パーキンソン病の症状を緩和し、患者さまが日常生活を快適に過ごせるようにサポートします。

iPS細胞を使ったパーキンソン病の治療

根本的な治療法が確立していないパーキンソン病ですが、近年、iPS細胞を用いた治療に期待が高まっています。
薬物投与による治療は、ドーパミンを外から補うものでしたが、iPS細胞を用いた治療では、脳に移植手術を施すことによってドーパミンを産生する機能の改善を図ります
具体的には、iPS細胞でドーパミン神経細胞のもととなるドーパミン神経前駆細胞を作り、脳に移植するというものです。

このiPS細胞を用いたパーキンソン病の治療が確立すれば、患者さまのドーパミン産生能力を改善でき、ひいては根本的に治せるようになる可能性があります。
関連記事:パーキンソン病は治る?治療の効果、新しい治療と注意したいポイント

iPS細胞を使ったパーキンソン病の治療で確認されている成果

現在、日本やアメリカにおいて、iPS細胞を用いたパーキンソン病の治療の臨床実験が実施されています。

その一例として、2018年から2023年にかけて行われた、京都大学の医師主導治験が挙げられます。
この治験では、薬剤投与の効果がみられない7人の被験者に対し、健常者の細胞から作ったiPS細胞の移植が実施されました。

治験の主目的は、治療の安全性の評価にあります。
具体的には、移植したiPS細胞由来のドーパミン神経細胞が、腫瘍化しないかどうかの観察です。

2024年9月時点では、治験の結果は発表されていないものの、終了時までに重篤な有害事象が起きた、という旨の報告はありません
今後発表される結果によっては、パーキンソン病が完治できる未来もそう遠くはないのではないかと期待されています。

パーキンソン病は、iPS細胞による根本的な治療の確立が期待されている

本記事では、iPS細胞の概要とともに、パーキンソン病の治療の現状を解説しました。

パーキンソン病の根本的な治療法として、iPS細胞を用いた治療が期待されています。
その治療法は、iPS細胞でドーパミン神経細胞のもととなるドーパミン神経前駆細胞を作り、ドーパミン産生能力を改善するというものです。
パーキンソン病の根本的な改善を実現するため、すでにiPS細胞を用いた臨床実験も実施されています。

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監修者

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花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。

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