column

コラム

    公開日: 更新日:

親を施設に入れるタイミングや手順とは?入居を嫌がる親の対処法も解説

親を施設に入れるタイミングや手順とは?入居を嫌がる親の対処法も解説

親の介護施設入居、タイミングや手順は?入居を嫌がる際の対処法も解説

「親の認知症が最近進んだ気がする。施設の話をいつ切り出せばいいのだろう」「在宅での介護を続けてきたけれど、心身ともに限界が近いかもしれない」。
親の介護施設への入居を考え始めると、多くの方がそのタイミングや進め方に頭を悩ませます。一つの重要な判断基準は、ご家族が自宅での介護に身体的・精神的な限界を感じ始めたときです。
適切な時期に準備を開始することで、親子双方が満足できる施設選びが可能になります。本稿では、親の施設入居を検討すべきタイミング、具体的な手続き、そして入居に難色を示す親への対応策までを詳しく解説します。

親の介護施設入居を検討すべき3つのタイミング

窓辺で話す親子
以下に挙げるような状況が見られるようになったら、施設への入居を具体的に考え始めるサインと言えるでしょう。

  • ✓認知症が進み、常に見守りが必要になった場合
  • ✓介護者の身体的な負担が増大したとき
  • ✓介護者が精神的な限界に達したと感じたとき

1. 認知症が進行し、常時見守りが必要になったとき

認知症の症状が進行すると、ご本人の安全を確保しながら在宅での生活を維持することが困難になります。

  • ✓徘徊や目的のない外出が増加した
  • ✓火の消し忘れや水道の閉め忘れが頻発する
  • ✓トイレの失敗が増え、衛生的な管理が難しい
  • ✓金銭の管理ができず、問題が生じている

こうした常時見守りが必要な状態は、ご家族の負担を急激に増大させます。専門スタッフが24時間体制で見守る施設環境は、ご本人とご家族の双方にとって安心につながります。

2. 介護者の身体的な負担が大きくなったとき

ベッドからの移乗や入浴の介助、夜間のトイレ付き添いなど、介護には相当な体力が不可欠です。介護者自身の年齢や健康状態によっては、身体的な負担が許容量を超えることがあります。

  • ✓介護による慢性的な疲労や寝不足が続いている
  • ✓介助が原因で腰などを痛めてしまった
  • ✓仕事や家事と介護の両立が難しくなった

介護者が心身の健康を損なってしまっては、共倒れになりかねません。ご自身の健康を守るためにも、介護の専門家に頼るという選択肢を検討しましょう。

3. 介護者が精神的に限界を感じたとき

終わりが見えない介護生活は、精神的にも大きなストレスを伴います。「介護うつ」という言葉に象徴されるように、精神的に追い詰められた状態では、穏やかな気持ちで親と接することが困難になります。

  • ✓介護のことを考えると気分が沈み、将来への強い不安を感じる
  • ✓些細なことで親に苛立ってしまう
  • ✓自分自身の時間が全く持てず、社会から孤立していると感じる

精神的なゆとりを取り戻し、良好な親子関係を維持するためにも、施設への入居は前向きな選択肢となり得ます。

親を介護施設に入れるための5ステップ

ステップを示すイラスト
施設への入居は、一般的に以下の手順で進行します。施設探しから入居完了まで、順調に進んだ場合でも1〜3ヶ月程度を見込むのが一般的です。

  1. 本人と家族での話し合い
  2. 施設の情報収集と条件の整理
  3. 施設の見学や体験入居
  4. 申し込み、面談、契約
  5. 入居準備と実際の入居

ステップ1:本人と家族で話し合う

何よりもまず、ご本人の意思を確認することが最も重要です。 判断能力がまだ十分にある場合は、将来の生活についてどのように考えているか、本人の希望を丁寧に聞き取りましょう。 同時に、兄弟姉妹などの親族とも情報を共有し、協力体制を整えておくことが不可欠です。 事前に親の現状と施設入居が必要と考える理由を伝え、理解を求めておきましょう。

ステップ2:施設の情報収集と条件整理

パソコンで介護施設の情報を収集する様子
希望する条件を整理してから、情報収集を始めます。自治体の高齢者福祉課や地域包括支援センターは、公的施設に関する情報や地域の介護サービスについて教えてくれる信頼できる相談窓口です。 インターネット検索や施設の公式サイトから直接情報を得ることもできます。

以下の項目について希望の優先順位を定めておくと、施設を効率的に絞り込めます。

  • 立地:家族が面会に通いやすい場所か、交通の便は良好か。
  • 費用:入居一時金などの初期費用と月額利用料が予算の範囲内か。
  • 入居条件:要介護度、認知症の有無、必要な医療的ケアなど、本人の心身の状態に適合しているか。
  • 介護・医療体制:スタッフは24時間常駐しているか、終末期の看取りに対応しているか。
  • 居室・設備:個室か多床室か、本人が快適に過ごせる環境が整っているか。

ステップ3:施設の見学・体験入居

候補を2〜3施設に絞り込んだら、必ず見学に訪れましょう。 資料だけでは把握できない、施設の実際の雰囲気やスタッフ、入居者の様子を直接感じ取ることが大切です。
見学の際には、以下の点を確認しましょう。

  • ✓施設全体が清潔に保たれ、明るい雰囲気か
  • ✓スタッフや入居者の表情は明るく、挨拶は交わされているか
  • ✓食事は美味しそうか(試食が可能な場合もあります)
  • ✓質問に対して、スタッフが誠実かつ丁寧に説明してくれるか

もし可能であれば、数日間実際に施設で生活してみる体験入居を利用することで、入居後の暮らしをより具体的に想像できます。

ステップ4:申し込み・面談・契約

入居を希望する施設が決まったら、申し込み手続きを行います。その後、ご本人と家族が施設の担当者(施設長や生活相談員など)と面談を実施します。 面談では、本人の心身の状態や生活歴、希望するケアについて伝え、施設側が受け入れ可能かを判断します。
審査を通過し、入居可能と判断されれば、契約手続きへと進みます。契約に際しては、一般的に診療情報提供書(かかりつけ医からの紹介状)、健康診断書、住民票、印鑑証明といった書類が必要となります。

ステップ5:入居準備・入居

契約が完了したら入居日を調整し、衣類や身の回りの品々など、新しい生活で必要となるものを準備して入居の日を迎えます。

入居を嫌がる親への対処法

悩んでいる高齢の親と話す娘
「住み慣れた家を離れたくない」「まだ自分でやれる」といった理由で、親が入居を拒否するケースは珍しくありません。 無理強いはせず、丁寧な対話を辛抱強く重ねることが大切です。

1. なぜ嫌なのか、本音を傾聴する

まずは、親がなぜ施設の利用をためらうのか、その理由にじっくりと耳を傾けましょう。 「長年住んだ家を離れるのが寂しい」「見知らぬ人との共同生活に不安がある」「家族に迷惑はかけたくない」など、様々な感情が渦巻いているはずです。 その気持ちを否定せずに、「そう思うのはもっともだよね」と一度受け止める姿勢が重要です。

2. 施設での暮らしのポジティブな側面を伝える

施設で楽しそうに話す高齢者たち
親世代が抱きがちな「老人ホームは暗くて自由がない場所」といった古い固定観念を払拭し、現代の施設が持つ肯定的な側面を伝えましょう。

  • ✓専門のスタッフがいるので、夜間も安心して過ごせること
  • ✓栄養バランスが考慮された温かい食事が毎日提供されること
  • ✓レクリエーションや行事を通じて、新たな友人や楽しみが見つかる可能性があること
  • ✓家族は「介護」の重圧から解放される分、笑顔で穏やかに面会に来られるようになること

3. 第三者である専門家の意見を聞く

家族間での話し合いが難航した場合は、ケアマネジャーや医師といった第三者の専門家に同席してもらうのも効果的です。 介護のプロから「現在の状態では、ご自宅での生活は転倒や体調の急変リスクが高いです」「施設で専門的なケアを受けることで、今の状態を維持、あるいは改善できる可能性があります」といった客観的な意見を伝えてもらうことで、親も冷静に状況を理解しやすくなります。

介護施設の費用相場

電卓とお金
費用は、施設を選ぶ上で極めて重要な要素です。公的施設か民間施設かによって大きく異なります。

※下記の費用はあくまで一般的な相場であり、施設の種類、居室のタイプ、地域、本人の所得などによって大きく変動します。

公的施設の費用相場

施設種類 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設
初期費用 0円 0円
月額費用 8~15万円前後 10~20万円前後

比較的費用が安価なため人気が高く、入居待機者が多い傾向にあります。

民間施設の費用相場

施設種類 介護付有料老人ホーム グループホーム シニア向け分譲マンション
初期費用 0~数千万円 0~数百万円 数百万~数億円
月額費用 15~35万円 15~20万円 10~30万円(管理費等)

提供されるサービスや設備の充実度合いによって費用は大きく変動します。

「親を施設に…」罪悪感との向き合い方

悩みを抱える女性
親を施設に入居させることについて、罪悪感を抱く必要は一切ありません。それは、親の安全と介護するご家族自身の生活を守るための、前向きで責任ある決断だからです。

介護保険制度は、介護を家族だけで抱え込まず、社会全体で支え合うという理念に基づいています。 在宅介護を無理に続けた結果、介護疲れが虐待につながったり、親子共倒れになったりするケースも少なくありません。
介護の専門家に任せることで、家族は身体的・精神的なゆとりを取り戻すことができます。 そして、「介護者」という役割から解放され、純粋に「子」として親と穏やかな時間を持てるようになるのです。 入居後も、頻繁に面会に訪れたり、施設の行事に一緒に参加したりと、関わりを続ける方法はたくさんあります。

まとめ:親が元気なうちに、将来の話をしておこう

お茶を飲みながら話す親子
最も理想的なのは、親が元気で判断力も確かなうちに、将来の暮らし方について家族で話し合っておくことです。 「もし将来、介護が必要になったら、どこでどんな風に暮らしたい?」と、普段の会話の中でさりげなく希望を聞いておくだけでも、いざという時の備えになります。

親の希望を尊重しつつ、ご家族にとっても最善の道を選べるよう、早めに準備を始めることが何よりも大切です。
『有料老人ホームスーパー・コート』では、ご本人様とご家族様が心から納得して新しい生活を始められるよう、経験豊かな相談員が親身にご相談を承ります。施設見学やオンラインでの相談も随時受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
有料老人ホームスーパー・コートの見学お申し込みはこちらから→見学申込み
有料老人ホームスーパー・コートの資料請求はこちらから→資料請求
有料老人ホームスーパー・コートへのお問い合わせはこちらから→お問い合わせ

監修者

監修者の写真

花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。

一覧へ戻る