
column
コラム
公開日: 更新日:
寝たきりで筋力が低下すると廃用症候群になる?原因や予防法をご紹介

寝たきりを防ぐ「廃用症候群」とは?原因と予防法をわかりやすく解説
病気や怪我がきっかけで親が寝たきりの状態になってしまうと、ご本人の苦痛はもちろん、支えるご家族の心身にも大きな負担がかかります。
「年齢を重ねても、可能な限り健康で自立した暮らしを送りたい」というのは、誰もが抱く願いでしょう。
寝たきりを回避するためには、その大きな原因となる**「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」について正しく理解し、早期から予防に取り組むことが極めて重要です。
この記事では、廃用症候群がなぜ起こるのか、そして具体的な予防策にはどのようなものがあるのかを、分かりやすくご説明します。
なぜ高齢者は寝たきりになりやすいのか?4つの原因

高齢者が寝たきり状態に陥る背景には、加齢に伴う身体的な変化と、日々の生活スタイルが複雑に関係しています。
1. 病気やケガによる安静と急激な筋力低下
骨折や脳卒中、肺炎といった疾患や怪我で入院生活を送ると、活動量が著しく低下し、筋力はまたたく間に衰えてしまいます。
特に高齢者の場合、身体を動かさないでいると1週間で10〜15%、1ヶ月後には約半分の筋力が失われるとの指摘もあり、十分な注意が求められます。
加えて、入院中は食欲も減退しやすく、筋肉を生成する上で不可欠なたんぱく質が不足する「低栄養」状態に陥り、筋力の低下をさらに加速させてしまいます。
2. 過度な安静による心身機能の低下
もちろん治療上、安静が必要な期間は存在しますが、必要以上に「安静にしすぎる」ことも寝たきりを招く一因となります。
体を動かさない状態が長引くと、筋力だけでなく関節の柔軟性が失われたり、心肺機能が低下したりします。そして、「動くのがおっくうだ」と感じるようになり、活動意欲そのものが削がれてしまうという悪循環に陥りがちです。
3. 日常生活での活動量の低下
退院した後も、関節の痛みや体力の衰えを理由に外出を避けるようになると、自宅に引きこもりがちになってしまいます。
日々の活動量が減れば、筋力はさらに衰え、ますます動けなくなるという負のスパイラルが進行します。
このような状態は、認知機能の低下や「うつ」といった精神面の不調を招く危険性も高めてしまいます。
4. 生活環境の問題
自宅の周囲に坂道や階段が多い、あるいは家族が心配するあまり何でも手伝ってしまうなど、身体を動かす機会が少ない環境も筋力低下の一因です。
ご本人が「自分でできること」まで家族が代行してしまうと、身体を動かすチャンスを奪うだけでなく、本人の自立心や意欲(モチベーション)をも損なうことになりかねません。
寝たきりの引き金「廃用症候群」とは

廃用症候群は、別名「生活不活発病」とも呼ばれ、寝たきり状態を予防する上で最も警戒すべき状態です。
廃用症候群の定義と症状
廃用症候群とは、過剰な安静や、病気・怪我による長期間の不動状態が原因で引き起こされる、心身の様々な機能低下の総称です。
単に筋力が落ちるだけでなく、全身に多岐にわたる症状が現れる点が特徴です。
| 分類 | 主な症状 |
| 筋骨格系 | 筋萎縮(筋肉がやせ細る)、関節拘縮(関節が硬くなる)、骨粗しょう症 |
| 循環器・呼吸器系 | 心肺機能の低下、血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)、誤嚥性肺炎 |
| 精神・神経系 | 認知機能の低下、うつ状態、睡眠障害、自律神経の不安定 |
| 皮膚 | 床ずれ(褥瘡) |
| その他 | 便秘、食欲不振、起立性低血圧(立ちくらみ) |
一度なると回復には長い時間が必要
一度、廃用症候群の状態に陥ると、元の健康状態に戻るためには、安静にしていた期間の数倍もの時間が必要だとされています。
一例として、1週間の安静によって低下した身体機能を取り戻すために、1ヶ月以上のリハビリテーションを要する場合もあります。
だからこそ、廃用症候群は「発症後に治療する」のではなく、「発症しないように予防する」という視点が何よりも重要になります。
寝たきり・廃用症候群を防ぐ7つの予防法

廃用症候群を予防し、寝たきり状態を避けるためには、日々の暮らしにおける小さな工夫が鍵となります。
1. 栄養バランスの取れた食事
筋肉や骨の素となるたんぱく質(肉、魚、卵、大豆製品)やカルシウムを積極的に摂取し、低栄養状態を避けましょう。 栄養バランスの整った食事は、免疫力の維持にも貢献し、感染症の予防につながります。
2. 口腔ケアの徹底
自分の歯でしっかり噛んで食事をすることは、栄養を摂る上での基本です。 毎日の歯磨きやうがいを習慣にし、定期的に歯科医院で検診を受けることで口の中を清潔に保ち、誤嚥性肺炎のリスクを低減させましょう。
3. 「座る」時間を意識的に作る

日中、横になっている時間が長い場合でも、意識的にベッドから起き上がり、座る時間を設けることが大切です。 座るという行為だけでも、姿勢を維持するために筋力を使うため、関節が硬直するのを防ぐ効果があります。 また、目線が変わることは脳への良い刺激となり、意欲の向上にも結びつきます。
4. 「自分でできること」は自分でする
着替え、トイレ、食事といった日常動作は、たとえ時間がかかっても、可能な限りご本人の力で行ってもらうことが重要です。
過度な手助けは、本人が持っている身体機能(残存機能)や自立への意欲を削いでしまいます。 手すりを設置するなど、安全に自力で動ける環境を整備する工夫も効果的です。
5. 精神的なサポートと役割づくり
「自分は誰かの役に立っている」という感覚は、生きる活力の源となります。
本人の心情に寄り添い、話を丁寧に聞くとともに、洗濯物をたたむ、テーブルを拭くといった簡単な役割をお願いしてみるのも良いでしょう。 達成感や満足感が、ポジティブな気持ちを引き出すきっかけになります。
6. 人と交流する機会を持つ
家族以外の人との会話は、脳にとって良い刺激となり、認知症やうつ状態の予防に役立ちます。 デイサービスや地域の集まりなどを活用して社会との接点を持ち続けることが、心身の健康を保つ上で大切です。
7. 無理のない範囲で運動を続ける
足腰の筋力を保ち、転倒を防ぐための軽い運動を生活に取り入れましょう。 運動を始める際は、必ず医師や理学療法士などの専門家に相談し、安全な環境で実施してください。
| スクワット |
※5~6回を1セットとし、1日3セットが目安 |
| 片足立ち |
※左右1分ずつ、1日3回が目安 |
まとめ:寝たきりを防ぐには早期の対策と環境づくりが重要

寝たきり状態を未然に防ぐには、日々の生活の中で少しでも体を動かす習慣を保ち、「廃用症候群」に陥らないよう早期に対策を始めることが何よりも肝心です。
ご家庭での栄養管理や運動の継続、介護負担の増加に不安がある場合には、介護施設への入居も有力な選択肢です。 介護施設では、栄養士が管理した食事が提供され、専門スタッフの見守りのもとで安全に運動する機会が保証されています。
『有料老人ホームスーパー・コート』 では、ご入居者様の心身機能の維持・向上をサポートするため、天然温泉や独自の フィットネスプログラム(SC-Fit)**など、いきいきとした毎日をお送りいただくための環境をご用意しています。
24時間体制でスタッフが常駐し、ご入居者様のわずかな変化にも気を配りながら、日々の生活を支えます。 寝たきりの予防や将来の暮らしについて、どうぞお気軽に『スーパー・コート』へご相談ください。
有料老人ホームスーパー・コートの天然温泉についてはこちら
オリジナルのフィットネスプログラム(SC-Fit)についてはこちら
有料老人ホームスーパー・コートの見学お申し込みはこちらから→見学申込み
有料老人ホームスーパー・コートの資料請求はこちらから→資料請求
有料老人ホームスーパー・コートへのお問い合わせはこちらから→お問い合わせ
監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。







