ADL（日常生活動作）とは？種類・評価方法・低下予防のポイントを紹介！

「近頃、親の日常生活が少し心配になってきた」「リハビリの場でADLという言葉を聞いたけれど、一体どういう意味だろう？」
ご家族の介護について考え始めると、ADL（日常生活動作）という言葉に触れる機会が増えるかもしれません。
ADLとは、自立した日々を送るうえで土台となる、基本的な生活動作を指します。
加齢とともにこのADLは徐々に低下し、それに伴い介護の必要性が増していきます。
この記事では、ADLにはどのような種類があるのか、家庭で実践できるADL低下の予防策、そしてADLが低下した場合に利用できる介護サービスについて、具体的に解説していきます。

ADLとは「日常生活を送るための基本的な動作」

ADLは「Activities of Daily Living」の頭文字を取った言葉で、日本語では「日常生活動作」と訳されます。
具体的には、食事をとる、服を着替える、トイレに行く、お風呂に入る、移動するといった、日々の暮らしに不可欠な基本行動全般を指します。
介護やリハビリテーションの分野では、ADLの自立度がどの程度かを評価し、一人ひとりに必要なケアプランを立てるための重要な指標として活用されています。
高齢の方が自立した生活を一日でも長く続けるためには、このADLを維持し、向上させることが極めて重要になります。

ADLの2つの種類：「BADL」と「IADL」

ADLは、その動作の内容から、大きく2つのカテゴリーに分類されます。

BADL（基本的日常生活動作）

BADL（Basic ADL）は、人が生活する上で最低限求められる、基本的な身の回りの動作を指します。一般的に「ADL」と言う場合、このBADLを意味することが多いです。

• 食事、着替え、トイレ、入浴、整容（洗顔や歯磨きなど）、移動（ベッドから車椅子へ移るなど）

これらは他者に代わってもらうことが困難な動作であるため、BADLの低下は介護の必要性が高い状態と判断される一因になります。

IADL（手段的日常生活動作）

IADL（Instrumental ADL）は、BADLよりも一段階複雑で、社会生活を送る上で必要となる応用的な動作のことです。

• 買い物、洗濯、掃除、料理、電話の応対、交通機関の利用、服薬管理、金銭管理など

これらの動作は、他者に代行してもらうことも可能です。一般的に高齢者の機能低下は、まずIADLに現れ、それが進行することでBADLにも影響が及ぶとされています。このため、IADLの低下サインに早期に気づき、対策を始めることが介護予防の重要な鍵となります。

ADLの評価方法

介護施設や医療機関では、ADLを客観的に測るための専門的な評価スケールが用いられています。ここでは代表的な2つを紹介します。

BI（バーセルインデックス）

BIは、その人が能力として「できるADL」を評価する指標です。
食事や移乗、トイレ、入浴といった10項目に対し、どのくらい自立して行えるかを点数化（満点は100点）し、点数が高いほど自立度が高いと判断します。
ただし、比較的簡易な評価である一方、評価の場では普段以上の力を発揮し、実際の生活状況よりも高い点数が出やすい点に留意が必要です。

FIM（機能的自立度評価法）

FIMは、実際の生活場面で「しているADL」を評価する指標です。
運動に関する13項目と認知に関する5項目、合計18項目について、日常生活でどの程度の介助を要するかを7段階で詳細に評価（満点は126点）します。BIに比べて評価に時間はかかりますが、より生活実態に即した能力を把握できるという利点があります。

ADLが低下する原因

ADLが低下する背景には、単一の理由だけでなく、複数の要因が複雑に関係しています。

• 加齢に伴う身体機能の低下： 筋力、バランス感覚、柔軟性などの衰え。
• 病気や外傷の影響： 脳卒中の後遺症、骨折、パーキンソン病、関節リウマチなどの疾患。
• 認知機能の低下： 認知症の進行により、一連の動作を順序立てて行うことが困難になる。
• 生活の不活発化（廃用症候群）： 外出が減ったり、閉じこもりがちになったりすることによる心身機能の全体的な低下。
• 精神面の不調： うつ状態や物事への意欲の減退。

ADLを保つためには、身体機能の維持だけでなく、社会的な関わりや心の健康にも目を向けることが重要です。

ADL低下を予防するための5つのポイント

ADLの低下は、日々の暮らしの中での小さな工夫によって、その進行を予防したり、緩やかにしたりできます。

1. 「できること」は、時間がかかっても自分で行う

本人のADLを保つためには、ご家族が必要以上に手助けをしないことが何よりも大切です。たとえ時間がかかったり、上手くできなかったりしても、本人が自力でできることは根気強く見守る姿勢が求められます。「自分でやり遂げた」という感覚が、次への意欲を引き出します。

2. 安全な生活環境を整える

転倒して骨折することは、ADLを大きく低下させる要因の一つです。廊下やトイレ、浴室に手すりを付けたり、家の中の段差をなくしたりといった住宅改修で、安全に動ける住環境を確保しましょう。これらの改修には、介護保険の補助金を利用できる場合があります。

3. 無理のない範囲で運動やリハビリを続ける

散歩やテレビ体操など、本人が楽しいと感じ、続けられる運動を生活に取り入れましょう。筋力や平衡感覚を保つことは転倒予防に繋がります。デイサービスなどを利用し、専門家の指導のもとで機能訓練に取り組むことも非常に有効です。

4. バランスの取れた食事を心がける

筋肉や骨をつくる源となるたんぱく質やカルシウムを十分に摂取し、低栄養状態に陥らないようにすることが重要です。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品といった食品を、日々の食事にバランス良く取り入れることを意識しましょう。自身での調理が難しい場合は、配食サービスを活用するのも一案です。

5. 社会とのつながりと「生きがい」を持つ

趣味の会や地域のサロンに参加するなど、定期的に外に出て人と交流する時間は、心身の健康維持に不可欠です。「楽しい」「人の役に立っている」といった実感は生活に張りを与え、ADLの維持・向上に良い影響をもたらします。

ADL低下が進んだときに利用できる介護サービス

ADLが低下し、ご自宅での暮らしに難しさを感じるようになった場合は、介護保険サービスを有効に活用しましょう。

• 訪問介護（ホームヘルプ）： ホームヘルパーが自宅を訪れ、入浴・排泄・食事といった身体的な介助や、調理・掃除などの生活面の援助を提供します。
• デイサービス（通所介護）： 日帰りで施設に通所し、食事や入浴のサポート、機能訓練、他の利用者との交流（レクリエーション）などが受けられます。社会的な孤立を防ぐ役割も担います。

まとめ：ADLの維持・向上は、豊かなシニアライフの鍵

本記事では、ADLに関する基本的な知識と、その低下を防ぐための具体的な方法について解説しました。
ADLを高く保つことは、身体的な自立を維持するだけでなく、生活の質（QOL）そのものを高め、その人らしい豊かなシニアライフを送る基盤となります。
もしADLの低下が見られ、ご自宅での生活に不安が生じてきた場合や、将来を見据えて介護施設への入居をお考えの場合は、ぜひ「有料老人ホームスーパー・コート」までご相談ください。
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監修者

花尾　奏一　(はなお そういち)

介護主任、講師

＜資格＞

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

＜略歴＞

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験（ケアマイスター制度）の問題作成や試験官も務めている。