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寝たきり高齢者に起こる腰痛の原因は?治療方法や腰痛を予防する方法を紹介

寝たきり高齢者に起こる腰痛の原因は?治療方法や腰痛を予防する方法を紹介

寝たきり高齢者のつらい腰痛…原因と家庭でできる予防・緩和ケアを解説

「最近、寝たきりの親が頻繁に腰に手を当てている」「痛みを訴えているように見えるけれど、どう対応すれば良いのかわからない」
ご家族を介護する中で、こうした悩みを抱えている方は少なくありません。寝たきりの高齢者にとって、腰痛は非常に一般的で、深刻な苦痛を伴う症状です。
床ずれ(褥瘡)と異なり、腰痛は目に見えないため、ご家族がそのサインを察知し、適切に対応することが不可欠です。寝たきりの方の腰痛は、毎日のケアに少しの工夫を加えることで、痛みの緩和や予防が期待できます。
この記事では、寝たきり高齢者の腰痛の主な原因、治療法、そしてご家庭で実践可能な予防策について、具体的に解説していきます。

寝たきり高齢者に腰痛が起こる2大原因

ベッドで腰を押さえる高齢者
寝たきり状態の高齢者に腰痛が生じる背景には、大きく分けて2つの要因があります。

  • ✓身体を動かさないことによる筋力低下や骨の脆弱化
  • ✓腰部疾患の発症や悪化

1. 筋力低下と骨の衰え(骨萎縮)

身体を動かさない状態が続くと、筋肉や骨は驚くほど速く衰えます。人間の筋肉は、活動しない状態が1週間続くだけで10〜15%、3〜5週間で約半分にまで減少するといわれています。
腰部を支える腹筋や背筋が弱体化すると、上半身の体重を適切に支えられなくなり、腰椎へ過大な負荷がかかり痛みを引き起こします。
また、自力で寝返りを打つ筋力が失われると、長時間同じ姿勢を強いられ、腰周りの血流が悪化することも痛みの原因となります。さらに、骨も適度な負荷がかからないと弱くなる(骨萎縮)ため、腰椎自体がもろくなり、痛みを誘発しやすくなります。

2. 腰の病気の発症・悪化

加齢とともに、もともと腰に何らかの疾患を抱えている方は少なくありません。寝たきりに伴う筋力の低下が、既存の病状をさらに悪化させるケースがあります。

  • 腰椎椎間板ヘルニア:背骨の間でクッションの役割を果たす椎間板が突出し、神経を圧迫することで、腰やお尻、脚部に激しい痛みやしびれをもたらします。
  • 腰部脊柱管狭窄症:加齢などが原因で、背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫される疾患です。 仰向けの姿勢で痛みが増し、横向きで体を丸めると楽になるという特徴があります。
  • 脊椎圧迫骨折:骨粗しょう症によって骨が脆弱化した高齢者に頻発します。くしゃみや起き上がる際のわずかな動きで背骨が潰れてしまう骨折で、寝返りだけでも激痛が走ることがあります。

腰痛の主な治療法

医師の説明を聞く高齢者
腰痛が慢性化すると、生活の質(QOL)が著しく低下します。 まずは整形外科など専門の医療機関を受診し、痛みの原因を特定した上で、適切な治療を受けることが肝要です。

  • 薬物療法:痛みや炎症を抑制するための内服薬や外用薬(湿布など)を用いる、最も一般的な治療法です。 ただし、これは症状を一時的に緩和する対症療法であり、痛みの根本的な原因を取り除くものではありません。
  • 神経ブロック療法:痛みの根源となっている神経の周辺に局所麻酔薬を注射し、痛みの信号伝達を遮断する治療です。 強い痛みに対して、高い鎮痛効果が期待されます。
  • リハビリテーション:痛みが少し和らいだ段階で、過度な安静を避け、医師の指導のもとでリハビリテーションを開始します。 温熱療法、ストレッチ、マッサージ、運動療法などを通じて筋肉の緊張を緩和し、血行を促進することで、痛みの悪循環を断ち切ります。

リハビリテーションは、介護保険制度を利用して、訪問リハビリや通所リハビリ(デイケア)といった形で受けることも可能です。

家庭でできる!寝たきりの方の腰痛を予防・緩和する5つの方法

介護スタッフが高齢者の身体をケアしている様子
日々の介護の中で、ご家族が実践できる予防・緩和策は数多く存在します。

1. 定期的に身体の向きを変える(体位変換)

長時間、同じ姿勢でいると、身体の特定部位に圧力が集中し、血行不良や痛みを引き起こします。 2時間程度を目安に、仰向けから右向き、左向きへと、定期的に体の向きを変えてあげましょう。 体圧を分散する機能を持つマットレスを使用している場合は、3〜4時間ごとの体位変換で対応できることもあります。

2. 身体に合った寝具(マットレス)を使用する

寝たきりの方にとって、マットレスは腰の健康状態を大きく左右するアイテムです。 硬すぎても柔らかすぎても腰への負担となります。
自力での寝返りが困難な方には、体圧分散マットレス(エアマットレスなど)の利用が推奨されます。 要介護2以上と認定されている場合、介護保険を活用して月額1,000円前後の自己負担でレンタルできるケースが多いため、ケアマネジャーに相談してみるとよいでしょう。

3. 筋肉と骨を支える栄養を摂る

栄養が不足すると、筋力低下や骨粗しょう症を招き、腰痛を悪化させる原因となります。 筋肉の材料であるたんぱく質(肉、魚、卵、大豆製品)や、骨を丈夫にするカルシウム(牛乳、乳製品、小魚)、ビタミンD(きのこ類、魚類)を意識した、バランスの取れた食事を心がけてください。

4. 無理のない範囲でストレッチや運動を行う

身体を動かさないでいると、筋肉や関節はますます硬化してしまいます。 ベッドに寝たままできる簡単な運動を生活に取り入れましょう。

  • ✓足首や手首をゆっくり回す
  • ✓膝や肘の曲げ伸ばしをゆっくり行う
  • ✓足や手の指をグー・パーと開閉する

これらの運動は必ず痛みを感じない範囲で行い、もし不安があれば医師やリハビリの専門家に相談してください。

5. 「座る」時間を増やす

寝たきりの状態であっても、ベッドの背を上げて座る姿勢(座位)をとる時間を設けることは、腰痛予防に大変効果的です。 座ることにより、寝ているときとは異なる筋肉が刺激され、血行が促進されます。
ただし、急に上体を起こすと血圧が変動し、めまいを引き起こす可能性があるため、最初は30度程度の緩やかな角度から開始し、徐々に体を慣らしていくことが重要です。

まとめ:介護サービスや施設も活用し、腰痛の負担を軽減しよう

介護スタッフと笑顔で話す高齢者
寝たきり状態の方の腰痛は、ご本人の苦痛であると同時に、介護するご家族にとっても大きな負担になり得ます。 これまでご紹介した予防策を日々のケアに実践するとともに、訪問リハビリテーションといった介護サービスを積極的に利用し、専門家の支援を得ることも大切です。
ご家庭での介護継続が難しくなった際には、有料老人ホームへの入居も現実的な選択肢となります。 介護施設では、24時間体制での体位変換のサポートや、専門スタッフによるリハビリテーションなど、より手厚いケアを受けることが可能です。
「有料老人ホームスーパー・コート」では、提携医療機関との連携により月2回の訪問診療と24時間の緊急時対応体制を構築しており、医療的なケアが必要な方でも安心してお過ごしいただけます。 お一人おひとりの状態に合わせたケアプランを作成し、腰痛の緩和と予防をサポートします。 施設見学も随時開催しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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監修者

監修者の写真

花尾 奏一 (はなお そういち)

介護主任、講師

<資格>

介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士

<略歴>

有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。

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