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認知症で文句ばかり言うのはなぜ?文句の理由と対処方法を詳しく解説

認知症で文句ばかり言うのはなぜ?理由とやってはいけない対応を解説
「認知症の親を介護しているが、最近文句を言うことが増えた」
「昔は穏やかな人だったのに、認知症になってから怒りっぽくなり、どう接していいか分からない」
このような悩みをお持ちではないでしょうか。
以前は穏やかだった人が、認知症をきっかけに怒りっぽくなるのは決して珍しいことではありません。 しかし、それはご本人の性格が変わったわけではなく、ほとんどの場合、病気の症状がそうさせているのです。
この記事では、認知症の方が文句を言ったり怒りっぽくなったりする背景と、その具体的な対処法について詳しくご説明します。
介護者自身の心の負担を軽くするためのヒントもご紹介しますので、ぜひ最後までお役立てください。
認知症で文句ばかり言うようになる理由

認知症の方が文句を言うのには、ご本人なりの切実な理由が隠されています。 その原因を理解することが、適切な対応を見つけるための第一歩となります。
認知症の「BPSD(行動・心理症状)」が原因
文句や怒りといった言動の多くは、**認知症のBPSD(行動・心理症状)によって引き起こされていると考えられます。
BPSDは、脳の機能が低下することで直接生じる「中核症状」に、ご本人の元々の性格や置かれている環境、人間関係といった要因が複雑に影響し、二次的に現れる症状を指します。
| 中核症状:記憶障害、見当識障害(時間や場所が分からなくなる)、理解力・判断力の低下など、脳細胞が壊れることによって直接的に起こる症状。 |
BPSDには、不安、うつ状態、攻撃的な言動、徘徊、妄想など様々なものがあり、これらが文句や怒りっぽさとして表出します。 特に、以下のような中核症状との関連が深いとされています。
記憶障害からくる混乱と不安
認知症による記憶障害は、体験した出来事そのものを忘れてしまうという特徴があります。 その結果、周囲との会話がかみ合わなくなり、「なぜ自分の話が通じないんだ」という混乱や孤独感から、いら立ちや不満の言葉につながることがあります。
被害妄想(特に物盗られ妄想)
被害妄想も、文句や攻撃的な言動の大きな引き金となります。 中でも頻繁に見られるのが「物盗られ妄想」です。 ご自身で物を置いた場所を忘れてしまったにもかかわらず、「最も身近にいる介護者が盗んだに違いない」と強く思い込んでしまうのです。 疑われた介護者にとっては非常につらい症状ですが、これも病気が原因であることを理解することが重要です。
脳の機能低下による感情コントロールの困難
認知症になると、感情を理性で制御する役割を持つ脳の前頭葉の機能が低下します。 これにより、些細なことでも不安や怒りといった感情が湧きやすくなり、一度生じた感情を自分自身で抑えることが難しくなります。
その他の原因
- 薬の副作用:認知症の進行を緩やかにする薬の中には、副作用として興奮しやすくなったり攻撃的になったりするものがあります。 薬の服用を開始・変更してから変化が見られた場合は、主治医にその旨を伝え相談しましょう。
- 身体的な不調や不快感:便秘による腹部の不快感、体の痛み、皮膚のかゆみ、睡眠不足といった身体的な苦痛を言葉でうまく表現できず、それが「文句」や「不機嫌」として現れている可能性も少なくありません。
認知症の症状と「怒りっぽい性格」の違い

その人本来の性格による怒りっぽさと、認知症の症状としての怒りっぽさには違いが見られます。
認知症が原因の場合、以前は穏やかだった人が怒りやすくなるなど、元々の性格からの明らかな変化が特徴です。 また、怒りの引き金が本人にもよく分かっておらず、ごく些細なことで感情が爆発したり、一度怒り出すと気持ちを切り替えるのが難しかったりする点も、症状の一つと言えます。
認知症で文句ばかり言う方への適切な対処法

認知症の方のBPSDは、周囲の関わり方次第で穏やかになることもあります。 ご本人が安心できるような対応を心がけましょう。
1. まずは話を聞き、気持ちを受け止める

たとえ事実と異なる内容であっても、頭ごなしに否定することは避けましょう。 否定されると、ご本人は「自分を理解してもらえない」と感じ、不安や怒りをさらに強めてしまいます。 まずは「そう感じていらっしゃるのですね」「それはお困りですね」と、ご本人の訴えや感情を一旦そのまま受け止める(受容・傾聴)姿勢が大切です。
2. 相手の自尊心を傷つけない
認知機能が低下しても、プライドや羞恥心といった感情は保たれています。 子どもとして扱ったり、間違いを厳しく指摘したりする行為は、ご本人の自尊心を深く傷つけ、症状の悪化につながりかねません。 人生の先輩に対する敬意を忘れず、一人の大人として対等に接することが重要です。
3. 関心や話題をそらす
一つの不満にこだわり続けているような場合は、本人が好きな歌を一緒に歌ったり、お茶に誘ったりするなど、さりげなく関心を別の方向へ向けるのも有効です。 気分転換を促すことで、興奮が自然と収まることがあります。
4. 安心できる生活環境を整える
認知症の方は環境の変化に敏感で、常に不安を感じやすい状態にあります。 可能な限り住み慣れた環境を保ちつつ、手すりを設置したり段差をなくしたりと、安全に暮らせる工夫を施しましょう。 安心できる環境は、心の安定に直結します。
【NG対応】認知症の方に言ってはいけない言葉

良かれと思って発した言葉が、意図せずご本人を傷つけ、症状を悪化させてしまうことがあります。
| 【言ってはいけない言葉の例】 ✕ 「違うでしょ」「さっきも言ったでしょ」(否定・指摘) ✕ 「早くして」「まだ終わらないの?」(急かす言葉) ✕ 「どうしてできないの」「しっかりして」(本人を責める言葉) ✕ 「〇〇しなさい」(命令・強要) |
| 【言い換えの例】 ◯ 「そうですか、〇〇なんですね」(まずは受け止める) ◯ 「一緒にやってみましょうか」(寄り添う) ◯ 「〇〇が終わったら、お茶にしましょう」(次の楽しみを提示する) |
介護者がつらくなったときの対処法

毎日文句を言われ続けると、介護する側の心身もすり減ってしまいます。 共倒れになってしまう前に、外部のサポートを積極的に求めることが何よりも大切です。
1. 地域包括支援センターに相談する
介護に関する悩みは、まずお住まいの地域の「地域包括支援センター」へ相談することをお勧めします。 保健師やケアマネジャーといった専門家が、無料で親身に相談に応じてくれます。 利用可能な介護サービスや、介護者家族向けの支援に関する情報を提供してもらえます。
2. 介護サービスを利用して休息時間を確保する
デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)などを活用し、介護から物理的・心理的に離れる時間を意識して作りましょう。 介護者が心身をリフレッシュすることは、質の良い介護を継続するために不可欠な要素です。
3. 介護施設への入居を検討する
在宅での介護に限界を感じたときは、介護施設への入居も前向きな選択肢として考えましょう。 介護の専門家に委ねることで、ご本人もご家族も、心穏やかな日常を取り戻せる場合があります。
まとめ:理由を理解し、一人で抱え込まずに相談を

認知症の方が見せる文句や怒りといった言動は、病気がもたらす不安や混乱の表れです。 その背景にある理由を理解し、ご本人の気持ちに寄り添うことで、穏やかな時間が増えることも少なくありません。
しかし、介護者の負担が大きいと感じた際には、決して一人で抱え込まないでください。 介護の負担を軽減し、より良い親子関係を続けていくためにも、介護施設への入居は有効な選択肢の一つです。
『有料老人ホームスーパー・コート』では、認知症ケアの深い知識と経験を持つスタッフが、お一人おひとりの心に寄り添い、その方の長所や「できること」を最大限に引き出すケアを実践しています。
ご家族様にも安心して日々をお過ごしいただける生活の場をご提供しておりますので、ホームページやお電話にて、どうぞお気軽にご相談ください。
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監修者

花尾 奏一 (はなお そういち)
介護主任、講師
<資格>
介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
<略歴>
有料老人ホームにて10年間介護主任を経験し、その後「イキイキ介護スクール」に異動し講師として6年間勤める。現在は介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修の講師として活動しているかたわら、スーパー・コート社内で行われる介護技術認定試験(ケアマイスター制度)の問題作成や試験官も務めている。







